第341話 応援してくれる弘樹と明奈

「……真人君かい?」

 どうやら弘樹さんは朝刊を取るために外に出てきたみたいだ。パジャマ姿の弘樹さん、初めて見たな。

 外は暗く、玄関の明かりだけで俺が判別しにくかったのか、弘樹さんが疑問形で聞いてきた。

「はい。真人です。おはようございます」

「おはよう真人君」

 このまま挨拶だけで通り過ぎるのは良くないので、俺は走って弘樹さんに近づく。

「どうしたんだ真人君。こんな早朝からこんな所まで」

 当然の質問だよな。玄関開けたら家の前に娘の恋人……婚約者がいたらびっくりするよな。

 俺はここに来た経緯を弘樹さんに話した。

「そうだったのか。頑張っているんだな」

「えぇ。元の体型には戻りたくないですからね」

 放置したら、また元の怠惰な生活に逆戻りしてしまうかもしれないのと、綾奈の隣に堂々と立てないなと思ってのことだ。

 綾奈はもし俺がメタボに戻っても愛してくれるはずだけど、俺が自分を許せなくなる。

 綾奈が俺と一緒にいて笑いものにされたり、『趣味が悪い』など言わせないためにも、意地でも元の体型に、そして生活習慣には戻りたくない……!

「どうしたのあなた……あら、真人君」

「おはようございます明奈さん」

 弘樹さんが戻ってこないことを不思議に思った明奈さんも玄関までやってきたので、明奈さんにも事情を説明した。

「偉いわね真人君」

「い、いえ……それほどでも」

「それにしても、寝ている綾奈が真人君が来ているのを知ったら、あの子は残念がるでしょうね」

 やっぱり綾奈はまだ寝てるか。まだ六時きてないもんな。

「綾奈は寝てるんですね」

「そうねぇ。あと一時間以内には起きてくると思うけど……起こしちゃう?」

「い、いえ。やっぱり起こすのは申し訳ないので……」

 それに、登校時に会うんだ。わざわざ綾奈の貴重な睡眠時間を削りたくない。

「ふふ。真人君ならそう言うと思ったわ」

「あはは……ですので俺がここに来たのは綾奈には黙っていただけると」

「あぁ、わかった」

 綾奈がこれを知ったら、多分起こしてくれなかったことに対して『むぅ』って頬を膨らますと思うから……知らないほうがいい。

 でも……俺に会えなかったことで機嫌が悪くなる綾奈も見てみたい気も……。

「あなた。早くご飯食べないと時間がなくなるわよ」

 おっと、どうやら少し話し込んでしまったようだ。弘樹さんもこれから仕事で、早く朝食を済ませないといけないのに……。

「おっとそうだな。じゃあ真人君」

「はい。その……突然すみませんでした」

「謝ることはないよ。俺たちも真人君と話せて嬉しかったし。母さんもそうだろ?」

「もちろんよ。義理の息子と話せて嬉しくないわけないわ。それじゃあ真人君。ランニング頑張ってね」

「ありがとう、ございます。……その、お義父さん、お義母さん」

 俺が二人をそう呼ぶと、二人は笑顔を見せてくれた。

 それから手を振りながらゆっくり玄関を閉めていった。

 朝から弘樹さんと明奈さんの二人と話せて嬉しかったな。

 さて、体力も回復できたことだし、ランニングを再開するかな。

 俺は再び走りだし、公園を通りながら自宅へと帰った。

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