第333話 綾奈は理想のお嫁さん

 冬休み最終日。一月九日の月曜日。この日は祝日だ。

 この日は起床して朝食を食べたあとは、俺の部屋で綾奈とまったりとゲームをして午前中を過ごしている。プレイしているのは、茉子が来たときにやった対戦アクションゲームだ。

 この冬休みだけで、綾奈はだいぶ腕を上げた。

 最初、茉子と対戦した時なんか何もさせてもらえなかったのに、今では俺にたまに勝つくらいまで強くなった。

 茉子が俺たちの誰よりも実力が上だったのもあるけど、それでもこれはすごい進歩だと思う。

 途中から美奈も混ざって三人でプレイしたが、ほとんど美奈が最初に倒される結果となった。

「ちょっとお義姉ちゃん強すぎない!? なんでこんな短時間にここまで強くなってるの!?」

 このように、美奈も綾奈の上達ぶりに驚いている。

「真人にマコちゃんとの対戦以来、ほぼ毎日練習に付き合ってもらってたんだもん。もう美奈ちゃんには負けないよ」

「……ずっとイチャイチャばかりしてると思ってたのに」

「否定はしないが、イチャイチャとゲームばかりしてたわけじゃないぞ?」

 髪を乾かしあったり、俺が腰を痛めている時はマッサージをしてくれたりと、二人きりのときは決してゲームとイチャイチャだけしかしてないわけじゃない……あれ? ゲームとイチャイチャしかして……ない?

「スキあり!」

「あー! また負けたー!」

 でも、本当凄いな綾奈。美奈と二人で対戦したら勝率百パーだぞ。


 対戦が一段落し、美奈が口を開いた。

「でもお義姉ちゃんって、本当にお兄ちゃんの理想の彼女……お嫁さんだよね」

「そ、そうかな? ……えへへ」

 美奈の一言に、顔を緩めて笑みを見せる綾奈。可愛いしかないな。

「まぁ、綾奈は元から理想のお嫁さんだけど、どうしてそう思ったんだ?」

「だってそうでしょ? 学校一の美少女と呼ばれ、頭も良くて歌が上手い。性格もカンペキで料理も出来て、ゲームもこうやって付き合ってくれるしラノベも読む……オタクに理解があってお兄ちゃんにメロメロ。カンペキじゃない要素が見当たらないんだもん」

「言われて見れば……確かにな」

 美奈が挙げたことを改めて思うと、綾奈ってマジで俺の理想の女の子そのものだよな。

 前に母さんに綾奈を『最高な女性』って言ったけど、あの時よりさらにそう思う。

「私はもう真人色に染まりきってるも~ん♪」

 そう言って、綾奈は俺の肩に頭を預けてきた。

 そして俺は、もはや条件反射のように、そんな綾奈の頭を撫でた。

「もぉ、お兄ちゃん! お義姉ちゃんは今日で帰っちゃうんだから、少しは私もお義姉ちゃんに甘えさせてよ!」

 確かに冬休みが進むにつれ、綾奈が俺と過ごす時間は増えていったもんな。

 ここ数日は、綾奈は俺の部屋で一緒に寝てるから、寝る前に美奈が綾奈とおしゃべり出来ないし……そう考えると、綾奈大好きな美奈にちょっと申し訳ないな。

「わかったよ。……んしょ。じゃあ俺はちょっとトイレに行ってくるよ」

 俺は立ち上がり、それだけ伝えるとスマホを取り、自室を出てトイレに向かった。

 美奈もいろいろ話したいこともあるかもしれないから、トイレから出てしばらくはリビングにいようかな?

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