第323話 意外な人との再会
「ま、真人……大丈夫?」
「……ダイジョーブ」
ジェットコースターから降り、近くのベンチに座った俺は、ぐったりとしていた。
いや、ジェットコースター早すぎだろ! 当たり前だけどさ。
あのゆっくりと上へ昇っていくときなんて、まるで刑が執行されるような恐怖を掻き立てられたし、いざ頂上まで昇ってからのハイスピードでの急降下は、あの浮遊感とダイレクトに突き刺さる風の勢いがハンパなかった!
俺がジェットコースターが苦手な理由、そういうとこがあるんだよな。
克服も兼ねて乗ったから、今回は目を開けたまま最後まで乗り切ったんだけど、あんなに怖いものなんだな。
正直二度とごめんだけど、これからも綾奈と一緒に遊園地をめいっぱい楽しむためにも、頑張って乗り続けよう。……そのうちマンガみたいに魂が抜けなければいいんだけど。
「ありがとうね。苦手なのに一緒に乗ってくれて」
綾奈はそう言って、さっきからずっと俺の頭を撫でてくれている。とても心地いい。
「こ、これからも遊園地に来たら、絶対に乗ろう」
「む、無理だけはしないでね」
それからしばらくして、回復した俺は立ち上がり、綾奈と手を繋いで昼食を取るために移動した。
飲食エリアに来た俺と綾奈。
ちょうどお昼時ということもあって、どのお店も結構混んでいた。
これは席も空いてないかなと思いきや、奇跡的に端の方の席が空いていたので、俺たちはそこに座った。二人で使うには少し大きいけど、まぁ仕方がない。
「俺が買ってくるから、綾奈は荷物を見ててよ」
「わかった。気をつけてね」
「なにか食べたいの、ある?」
「私はなんでも。真人に任せるよ」
「りょーかい。じゃあ待ってて」
「いってらっしゃい」
綾奈は笑顔で手を振り、俺を送り出してくれた。
さて、何がいいかな?
俺は各お店で提供されているメニューを移動しながらざっくりと見ていく。
けっこうボリューミーだな。少食の綾奈は食べ切れるかわからない物が多い。
でも、こうして長考して綾奈を一人で待たせるのは色々と危険なので、早いとこ決めないとな。
悩んだ末、俺はこの遊園地のマスコットキャラが焼き印された三段のハンバーガーを、そして綾奈にはミニハンバーグセットを購入した。
うん。このくらいの量なら綾奈は完食できるだろう。
大きめのトレイに二人分のメニューを乗せ、人にぶつからないように慎重に綾奈が待つテーブルへと移動をしている時、突然声をかけられた。
「あら? あなたは確か……」
「え?」
呼ばれた方を振り向くと、そこには知っている年上の女性───大晦日に綾奈と行ったスーパーで試食用のソーセージを焼いていた店員さんがいた。
「やっぱり! あの時の旦那さんね!」
「こ、こんにちは。え? あなたもここに来ていたんですか?」
店員さんの隣には、旦那さんらしき四十代くらいの男性と、小学校中学年くらいの女の子がいた。
「
「そうよ。大晦日に出会った若い夫婦。その旦那さんよ」
麻子と呼ばれたあのスーパーの店員さんが、旦那さんに俺を紹介した。
どうやら大晦日の夕食時、この家庭では俺と綾奈の話が出たみたいだ。
「はじめまして。君のことは妻の麻子から聞いてるよ。俺は
「
「あ、えっと、中筋真人です」
俺たちはそれぞれ自己紹介をして、座る席がなかった菊本さん達を、綾奈が待つ席へと案内した。
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