第318話 翔太と麻里奈の交際時のエピソード
「おいお前ら……俺の
「西蓮寺さんのこの顔からして、この子には婚約者がいるって聞かされたはずだよな? なのにお前らは無視してナンパを続けたのか?」
お義兄さんも店長さんも、すごい剣幕だ。
「え、いや、その……」
「な、なんと言いますか……」
大学生の二人は、いきなり後ろから肩を掴まれて、振り返ったらすごい迫力の二人がいたから、相当焦っているみたい。この二人に凄まれて平然としていられる人なんていないと思う。
「ん? 言いたいことがあるならはっきりと言え」
「それ次第でお前らを許すか判断する」
「「す、すみませんでしたー!」」
二人はお義兄さんと店長さんの手を振り払って一目散に逃げていった。
……って、そうだよ。二人にお礼を言わないと!
「あ、あの、お義兄さん、店長さん。ありがとうございました」
私はお辞儀をして二人にお礼を言った。
「いいよこれくらい。大切な義妹に怪我がなくて良かった」
「本当にね。俺がショウの顔を見にドゥー・ボヌールに行って、こいつの買い出しに付き合ってたら偶然西蓮寺さんを見かけたからね。ところで西蓮寺さんはすごい怒ってたけど、あの二人に何を言われたんだ?」
「むぅ……それが───」
私はさっきの大学生二人組に言われたことを思い出し、頬を膨らませながらお義兄さんたちに説明した。
「……なあ、ショウ」
「……なんだ?」
「あの二人、逃がすべきじゃなかったかもな」
「俺もそう思った」
「ふ、二人とも落ち着いてください。私はもう大丈夫ですから」
昔はやんちゃしていたらしいこの二人が本気になったらと考えると、さっきの大学生に同情してしまう。
「ところで、その真人君はどうしたんだい?」
「中筋君は誰かを待たせる性格ではないはずなのに、珍しいな」
「えっと、実はですね───」
私は、待ち合わせの経緯についても二人に説明した。
「なるほどね。でも僕は真人君の気持ち、よくわかるな」
「そうなんですか?」
お義兄さんも、過去に似たような経験をしたのかな?
「こいつの場合はあの麻里奈ちゃんだもんな」
「麻里奈と付き合っている頃、麻里奈が今の綾奈ちゃんみたいに僕より早く待ち合わせ場所に着いていた時は、僕を待っている間にすごい数のナンパにあっていたんだよ。やっぱり二人は姉妹なんだね」
「あ、あぅ……」
そ、そんな話、初めて聞いたよ。
「ま、二人は誰もが振り返る程の美人姉妹だもんな」
「そ、それは言い過ぎかと……」
お、お姉ちゃんはともかく、私は……。
「西蓮寺さん。周りを見てみなよ」
「へ?」
店長さんの言うように、私は周りの人たちを見る。
すると、男の人の何人かは、私をチラチラと見て通り過ぎて行っている。
でも、それ以上に女の人がお義兄さんを見ている気がするけど……。
「あっ!」
私は、人混みの中から待ちわびていた人を見つけて、パァっと表情が明るくなった。
「まさと~!」
私は大きく手を振り、「私はここだよ」と真人にアピールした。
すると、真人も私を見つけてくれて、手を振りながら駆け足で近づいて来てくれた。
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