第314話 1歩深く……
「お、お邪魔します」
俺は一言ことわりを入れて、綾奈が待つ俺のベッドに入った。
自分のベッドに入るのに「お邪魔します」って変な感じだ。
「ふふ、ここは真人のベッドだよ。お邪魔してます」
やはり綾奈もおかしいと思ったみたいで、くすくすと笑っている。
俺も綾奈の返しに笑顔になって、ベッドに入った。
「電気、消すね」
「……うん」
俺がリモコンで部屋の電気を消灯すると、綾奈は俺との距離を詰めてきた。
「あ、綾奈!?」
「廊下、寒かったでしょ? だから温めてあげようと思って……」
「……とかなんとか言って、綾奈が俺にくっつきたかったんじゃないの?」
「……バレた?」
そんなこと言って、もし違ってたらめっちゃ恥ずかしいやつだったが、どうやら当たっていたようだ。
多分、綾奈は舌をペロッと出しているんだろうな。暗くて見えない……電気消すの早かったかな。
そんな可愛い綾奈を想像しながら、俺は綾奈を抱きしめた。
「温かい?」
「うん。とっても」
心までポカポカだ。
「今日のお誕生日会。どうだった?」
そんなの決まってる。
「最高だったよ。今までで一番の誕生日になったし、生涯忘れられない一日になった。本当にありがとう綾奈」
サプライズでケーキを焼いてくれて、その上指輪までプレゼントしてくれて……それが嬉しすぎて、あれだけ泣いたもの久しぶりだ。
「良かったぁ。……でもごめんね。今日までの数日間、不安にさせちゃって」
多分、拓斗さんのことを言ってるんだろうな。
「綾奈は悪くないよ。俺が綾奈を信じきれなかったのがいけなかったんだよ」
「ううん。私がちぃちゃんのお兄さん、拓斗さんをもっと早く紹介してたら真人を不安にさせることなんてなかったのに……本当にごめんね」
「もういいよ」
「うん……」
綾奈は俺の背中に手を回してきた。
拓斗さん、千佳さんと翔太さんに店の奥に連れて行かれて何をされたんだろうな?
聞かない方がいいのはわかってるけど気になってしまう。
「真人」
「……どうしたの綾奈?」
拓斗さんのことを考えていて返事が遅れた。
綾奈の俺の背中に回している手に力が入る。
「お昼にも言ったけど、私はずっと、真人のそばにいるからね」
「うん……」
「私の幸せは、真人の隣にいること。この幸せは何があっても絶対に手放さないからね」
「俺も同じだよ。綾奈のそばにずっといるから」
俺もこの幸せは、絶対に離さない。
「嬉しい。真人……」
綾奈は自分の頭の角度を変えて額を前に出してきた。
「綾奈……」
俺も同様に頭の角度を変えて、額を前に出す。
俺と綾奈の額がこつんと合わさった。
「「愛してる」」
そして同時に愛を囁いて、俺たちは口づけをした。
時間経過と共に、キスも激しくなり、お互いの唇を夢中で貪り合っていたのだが、綾奈がゆっくりと唇を離した。
綾奈は「はぁ……はぁ……」と少し息を切らしていて、声と共に、その息も俺にかかる。
「ま、ましゃと……」
俺の名前を舌足らず気味に呼び、その可愛さからまたキスがしたいと思った俺だったが、次の綾奈の言葉に、俺はフリーズした。
「キスだけで……いいの?」
「…………え?」
俺の聞き間違いか?
さっきの綾奈の言葉はまるで───
「キスより先も、していいんだよ?」
「っ!」
俺が思っていたことを綾奈が口にして、俺の顔は一気に熱くなり、心臓も痛いくらいに跳ねた。
「え? いや、なんで……突然?」
俺だってこの冬休み中、キスより先のことを何度もしてみたいと思っていたし、実際に太ももやお尻、胸も触ってしまった。
だけど、それ以上やってしまうと綾奈に怖い思いをさせてしまうと思った俺は、タガが外れないように自らブレーキをかけていた。おかげで毎日理性が忙しかった。
「本当に結婚はしてないけど、私たちはもう夫婦だもん。夫婦ならキスより先をするのは普通だし、今日は真人の誕生日なんだよ。……その、最後までするのはやっぱりダメだけど、真人のしたいと思ってること、我慢しなくていいんだよ。……私も、もっと真人に触れてほしいから」
「綾奈……」
「だから……触って」
綾奈は俺の手首を優しく掴み、そのままゆっくりと、俺の手を自分の胸へと持っていった。
「……んっ」
俺が綾奈の胸に触れた瞬間、綾奈の口から甘い声が漏れた。
その声が鍵となり、俺のタガが少しだけ外れて、いつもよりも一歩深く、綾奈を求めるのだった……。
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