第306話 Always Together
「あ、綾奈……これ……」
俺は、まさかの誕生日プレゼントに驚きを隠せないでいた。
顔が熱い。言葉がうまく出てこない。心臓がバクバクいっている。
「うん……。やっぱり私だけ婚約指輪を貰って、真人に贈らないのは嫌だったから。あのデートの次の日に雑貨屋さんに行ってきたの」
「そ、そうだったんだ」
俺は改めて指輪を見る。
本当に綺麗な指輪…………ん?
「綾奈。この指輪、裏に何か文字が……」
「実は、あの雑貨屋さんでアクセサリーに刻印を施してくれるサービスがあってお願いしたんだよ」
「ちょっと、見てもいい?」
「もちろん」
俺は指輪を慎重に手に取り、裏側に刻印された文字を見る。
『M&A』は、恐らく俺と綾奈のイニシャルだ。それから『A Together』と続いている。
この『A』は言葉の頭文字なんだろうけど……。
「綾奈。これは、なんて書いてるんだ?」
俺はそこに書いてある英語の意味を綾奈に聞いた。聞かずにはいられなかった。
「これはね───」
「『M&A Always Together』……真人と綾奈は、ずっと一緒……だよ」
「っ!」
やっぱり。
綾奈は、俺とずっと一緒にいることを、指輪というプレゼントだけでなく、刻印を施してまで約束してくれている。
「今まで私は、言葉だけでそれを示してきたけど、この指輪に誓うよ。私は何があっても真人から離れない。真人のそばにずっといるよ」
「あや、な……」
やばい。せっかく涙が止まったばかりなのに、また涙腺が緩んできた。
「真人、立ってくれる?」
「あ、あぁ」
俺はゆっくりと立ち上がり、涙で視界が滲みながらも綾奈をまっすぐ見つめる。
綾奈は俺が立ち上がると、俺の手のひらの上に乗っていた指輪を掴んだ。
「真人……私の大好きな旦那様。去年の夏、私と再会してくれてありがとう。ボディーガードを引き受けてくれてありがとう。私とお付き合いをしてくれてありがとう。私を真人の結婚相手に選んでくれてありがとう。……そして、生まれてきてくれて、ありがとう」
「あやな……ぐすっ」
俺だって、綾奈と同じことを思っているんだよ。
綾奈がそばにいるから、俺はこうして幸せでいられるんだ。
「これから毎年、私たちがおじいちゃんとおばあちゃんになっても、私がそばにいて『おめでとう』って言うからね。だから───」
綾奈はここで言葉を止め、自分の右手で俺の左手を持ち上げ、綾奈が左手に持っているシルバーの指輪を、ゆっくりと俺の左手の薬指にはめて……。
「ずっと、一緒にいようね」
満面の笑顔で、そう言った。
「うん……うんっ!」
俺は溢れ出る涙と鼻水で顔がくしゃくしゃになりながら何度も頷いた。
すっかり昔の『泣き虫真人』に戻っちゃったな。
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