第302話 真人の誕生日に向けて②
私がやってきたのはショッピングモールだ。
今日、ここで真人の誕生日プレゼントを買うために来た。
まだ二週間くらい先なので、ちょっと早い気もするけど、真人と一緒に生活をしている中でプレゼントを買いに行こうとすると、真人が気づいてしまうかもしれないので、お泊まりの前日の今日、買うことにした。
何をプレゼントするか既に決めていた私は、ショッピングモール内の雑貨屋さんを何件も見ていく。
「あ、ここってこんなサービスもやってるんだ」
とある雑貨屋さんの入口で、私はあるサービスの告知のポップを見た。
追加で料金は発生するけど、これは真人が喜んでくれる……そして照れたかわいい表情も見れると思った私は、このお店で買うことを決めた。
こうして真人への誕生日プレゼントを一時間くらい吟味して、選んだ物をレジへ持っていき、ポップにあったサービスとプレゼントラッピングをお願いした。
「こちらのサービスは本社へ商品を郵送してからになるので、お渡しにお時間がかかりますがよろしいでしょうか?」
どうやらお店のスタッフさんがするのではないらしい……。もしかしたら真人の誕生日に間に合わなかったり!?
「あの、一月六日までにはお願いしたいんですけど……」
「確認してみますので少々お待ちください」
そうして店員さんは電話をかけ始めた。
待つこと五分。
「お待たせいたしました。一月五日にはお渡しできるとのことですので大丈夫ですよ」
「そうですか! よかったぁ……」
誕生日に間に合いそうで、ほっと胸をなで下ろした。
「彼氏さんへのプレゼントですか?」
ほっとしたのも束の間。店員さんがにこにこしながら聞いてきた。
突然のことに、私の身体はビクッと跳ね、すぐに顔が熱くなってしまった。
「そ、そうですね……。大切な、本当に大切な人なんです。一月七日が彼の誕生日で……特別な物をプレゼントしたいなって……」
言いながら、私は真人を思い浮かべる。
昨日、本当に結婚の約束をしてくれた、世界一大切な私の旦那様。
一緒にいるだけで私の心を幸せで満たしてくれる真人。
そんな旦那様が私ににっこりと笑いかけて……好き♡
私も、そんな真人の心を幸せで満たしてあげたい。もらった幸せを、私のありったけの愛情を上乗せして返したい。
「きっと彼氏さんは喜んでくれますよ」
「はい。ありがとうございます!」
「それで、こちらのサービスですが……」
店員さんと短い会話をして、私はサービスの内容についてその店員さんと話し合った。
一月五日。忘れずに取りにこないと。
家に帰った私は、夕食とお風呂、そしてお泊まりに持っていく荷物の確認の時間以外は、全て宿題を片付けることに集中した。
一月一日。初詣。
「綾奈ちゃん。ちょっと」
「え?」
真人のそばにいると、突然茜さんに呼ばれた。
茜さんを見ると、私を手招きしていて、隣の山根君も同様に手招きをしている。
何かあるのかな? と思いながら、私は二人の傍に行くと、茜さんが小声で話し始めた。
「綾奈ちゃん。もうすぐ真人の誕生日だけど綾奈ちゃんは真人の誕生日がいつか知ってる?」
なるほど、私が真人の誕生日を知ってるかどうか聞くために呼んだんだ。
「もちろん知ってるよ。一月七日でしょ?」
私が知らないわけないよ。
なぜ私が真人の誕生日を知っているのか……それは、中学三年の三学期始業式の日……当時の私たちのクラスに来た山根君が、真人に『お前の誕生日は一月七日だから、いつも家族にしか祝ってもらえない可哀想なお前だ。俺も祝ってやるよ。誕生日おめでとう』って言っていたのを耳にしていたから。
口ではそう言いながらも、しっかりと真人の誕生日をお祝いしている山根君は、当時から友達思いだと知っていた。
それと同時に、私も真人の誕生日をお祝いしたいってすごく思っていた。
でも、当時の私と真人はただのクラスメイトの間柄だったし、話しかける勇気がなかったから、内心でお祝いすることしか出来なかった。
だから、今年からは絶対に毎年お祝いすると決めていた。
「わ、知ってたんだね。でもどこで知ったの? 真人から直接聞いた?」
「えっと……」
当時の真人と山根君の会話を聞いていたから……なんて言うと、二人はもしかしたら引くんじゃないかと思って、私は必死にそれっぽい理由を考えていた。
理由を考えていると、山根君が口を開いた。
「まあいいじゃん。西蓮寺さんが真人の誕生日を知っているかが重要なんだから」
「う~ん……ちょっと気になるけど、まあいいや」
良かった。山根君のおかげで理由を考えずにすんだ。
「しかし、流石西蓮寺さん。真人検定皆伝だな」
「あ、ありがとう」
よく分からなかったけど、真人のことで真人の親友の山根君に褒められると嬉しくなる。
「話はそれだけだから。来てくれてありがとう綾奈ちゃん」
何をプレゼントするのかも聞かれると思ったけど、本当にそれだけ聞きたかったみたいで、私は二人との会話が終了すると、すぐに真人のそばへと戻った。
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