第296話 誕生日前日のスキンシップは……

 今日はあの三人がいてくれて良かった。

 もし一人であの現場を目撃していたら、きっと今も綾奈を疑ったままだったろう。

 このあと綾奈が俺の部屋に来たとき、俺の誕生日を伝えて、あの男の人のことを聞いてみよう。

 ギリギリで俺の誕生日を伝えて、綾奈は怒るかな? 多分、頬を膨らませて拗ねるかもしれないな。

 もしそうなったらいっぱい謝ろう。そして明日は俺ととずっと一緒ににてもらうんだ。

 ここ数日は一緒にいる時間が短かったから、綾奈も一緒にいたいって言ってくれるはずだ。

 男の人については、俺が教えてほしいと言えば、綾奈はちゃんと教えてくれる。

 あの人と何をしていたのかも、頼めば教えてくれるはずだ。

「しかし、綾奈遅いな」

 俺が風呂から上がって既に一時間以上が経過している。

 スマホで時刻を確認すると、既に夜の十時を過ぎていた。

 いつもならこの時間には綾奈は来ていて、髪を乾かしているのだが……遅い。

 それからさらに一時間が経過。依然として俺は一人で自分の部屋にいる。

 こんなこと、この冬休みが始まって初めてだ。

 あと一時間もしないうちに俺の誕生日になる。

 落ち着きなくソワソワしている俺は、ベッドで何度も寝返りを打っていた。

 俺から美奈の部屋に行くことも考えないわけじゃなかった。

 だけど、さすがにこの時間だ。美奈も宿題を一段落させて就寝しているのかもと考えると、それも出来ずにいた。

 時間だけが刻一刻と過ぎていく中、美奈からメッセージが来た。

 あいつ、まだ起きてたのか……というか、隣の部屋なんだから直接言いにこいよ。と思わないでもないが、とりあえずメッセージを見てみよう。


【お義姉ちゃん、疲れてたのかいつの間にか寝ちゃったよ】


「……え?」

 美奈のメッセージを見た俺は、一気にテンションが下がった。

 ま、マジかよ……。

 美奈のやつもずっと宿題をやっていたから綾奈が寝てるのに気づいたのがついさっきなのだろう。

 それにしても、何をしてたんだろうな綾奈は……。

 いずれは教えてくれると思うけど、それよりもだ。


 今日一日、全く綾奈と触れ合えずに終わってしまった!


 今日も綾奈は帰宅したら俺と距離をとってたから、マジで今日は綾奈に触れていない。

 とてもショックだけど、教えてくれた美奈に何も言わないのもダメだよな。

 俺は、美奈に【教えてくれてありがとう】とメッセージを送り、スマホを枕元に置いた。

「はぁ……寝るか」

 これ以上起きていても仕方ないので、俺は部屋の電気を消して寝ることにした。

 気持ちが消沈していた俺は、もちろん寝付けるわけもなく、そうこうしてるうちに日付が変わり、一哉をはじめとした何人かから誕生日おめでとうのメッセージが来た。

 俺はそれら全てに返信をし、再び寝ようと目を瞑り、寝付いたのはそれから四時間以上経ってからだった。

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