第291話 ファミレスに行く前、茉子を迎えに

 午前中からモヤモヤした気持ちで過ごし、ラノベを読んでもゲームをしても集中出来ずに過ごしていた。

 時刻は二時半。雛先輩達との約束の時間まであと三十分。

 そろそろ出た方がいいと思った俺は、サッと着替えて家を出た。

 家を出る前、美奈に声をかけたのだが、美奈は冬休みの宿題をやっていた。

 去年までの俺もこんな感じだったけど、マジで宿題は早めに片付けた方がいいよ美奈。

 さて、このまま直で駅まで行くのもいいが……。

「迎えに行くか」

 俺は駅へ行く前に茉子の家へと向かった。

 茉子の家は、うちから駅までの道中、少しだけ道を外れた場所にあるので、迎えに行くのにさして支障はない。

「茉子の家に行くのも久しぶりだなぁ」

 いつ以来かは忘れたけど、年単位で行ってない。

 そんなこんなで茉子の家に到着。薄いグレーの外観はやっぱりいい色だよなぁ。

 俺は茉子の家のインターホンを押した。

『はい』

 少しして、インターホンから茉子の声が聞こえてきた。

 良かった。まだ出てはいなかった。無駄足にならずにホッとした。

「茉子。俺だ、真人だ」

『ま、真人お兄ちゃん!?』

 俺の声を聞き、インターホン越しで驚きの声を上げる茉子。

 うん……まぁ、来るって言ってなかったからね。

『え、ど、どうして真人お兄ちゃんが?』

「昨日雛先輩から聞いたけど、茉子もこれからファミレスに向かうんだろ? だから迎えに来た」

『うぅ~、真人お兄ちゃん優しすぎるよ~』

「そうかな?」

 目的地が一緒……というか、これからファミレスで会うんだから、だったらその間にある茉子の家に寄り、妹分を迎えに行くのはけっこう当たり前のような気もするけどな。

 それに、茉子と一緒に行くことで、モヤモヤした気持ちも紛れるかもしれないから……ちょっと前まで俺に好意を持っていて、今は兄と慕ってくれている後輩を利用するみたいでちょっと後ろめたい気持ちもあるが……。

『そうだよ。えっと、すぐに出るからちょっと待っててね』

「わかった。ゆっくりでいいよ」

 それから二分くらいで玄関から出てきた茉子。マジで早かったな。

 出てきた茉子は、相変わらずガーリーで可愛らしい服を着ていた。

「お、お待たせ。真人お兄ちゃん」

「ゆっくりでいいって言ったのに……まぁ、ありがとうな。茉子」

 ここから駅まで十分もかからない距離なので、まだそこまで慌てるような時間じゃないのに……俺を待たせまいとした茉子の優しさなんだよな。

 それから俺は、茉子の息が整うのを待った。

「それじゃあ行こうか」

「う、うん!」

 俺と茉子は並んで駅に向けて歩き出した。

「うぅ~、真人お兄ちゃんが迎えに来てくれて、駅まで二人で歩けるなんて……綾奈さんたちには悪いけど、すごくラッキーだなぁ」

「何か言った?」

「う、ううん! なんでもないよ」

「? そっか」

 茉子が何か言ったと思ったんだけど……空耳だったか? まあ、いいや。

 俺と茉子は他愛のない話をしながら駅に向かっていた。

 美奈がまだ冬休みの宿題が終わってないことを茉子に伝えると、茉子は苦笑いをしていた。

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