第286話 プレゼントは3人で渡したい

 それからも三人は、ショッピングモール内を目的もなく歩いていたら、香織が思いついたことを口にした。

「そういえばこのプレゼント、いつ渡す?」

「え?」

「いや、誕生日当日は綾奈ちゃんと過ごすだろうから無理だとして、それだと学校が始まってからかなって」

「でも~、そうなるとマコちゃんが時間を合わせにくいわよね~」

「そうなんですよね。私と雛さんは学校が一緒だからどうにかなるにしても、マコちゃんは中学生だし、家も風見高校から離れてるから……」

 香織はう~んと唸りながら、どうにか渡すタイミングを思案しているが、なかなかいい案が思いつかない。雛も考えているが、こちらも思いつかないのか、口を開けずにいた。

 そんな頭を悩ませている二人の代わりに、口を開いたのは茉子だった。

「あの、私のことは気にせずに、三学期が始まってからお二人で渡してもらっても大丈夫ですよ。真人お兄ちゃんには私もこのプレゼントを選んだと言ってくれれば……」

「それはダメだよ」

「え?」

「このプレゼントは私たち三人で渡す。渡したいの」

「香織さん……」

「そうね~。香織ちゃんの言う通りだわ~。このプレゼントは、私たち三人揃って渡さないと意味がないわ~」

「雛さん……。お二人とも、ありがとうございます」

 茉子に笑顔を見せる二人。

「だとすれば、やっぱり誕生日前に渡すのがベストかな?」

「そうね~。前日の六日なんてどうかしら~?」

「私はいいですよ」

「私もかまいません。真人お兄ちゃんに連絡しないとですね」

「ふ、二人が良かったらなんだけど~」

 雛が、これまでとは打って変わって遠慮気味になり、おずおずと手を挙げた。

「私から中筋君に連絡していいかしら~?」

「いいですけど、どうしたんですか?」

 香織も茉子も、特に反対意見はないが、あまり見ない雛の赤面した顔とこの態度に、理由を知りたいという気持ちが強く出てしまった。

「うぅ~、実は中筋君とちゃんと連絡を取りあったことが無くて~、好きな男の子と電話やメッセージのやり取りをしてみたいの……」

「……どうしようマコちゃん。雛さんめちゃくちゃ可愛いんだけど」

「私も同じことを思いました。普段は美人さんなのに、こういう可愛い一面もあるって反則ですよね」

「雛さんとライバルにならなくてよかった」

「まったくです」

 こうして真人への連絡は雛に一任され、三人は日が暮れるまで色々な場所で遊び、さらに親睦を深めた。

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