第283話 プレゼントを買いに来た香織、茉子、雛
真人と綾奈が一哉たちに呼び出され、ドゥー・ボヌールに行った二日後の一月四日。
二人の家から二駅離れた所にあるショッピングモールに、タイプも歳も違う美少女三人が集まっていた。
「それにしても、中筋君の誕生日がもうすぐなの知らなかった。マコちゃんが教えてくれなかったらスルーしてたよ」
「本当ね~。マコちゃん、ありがとう~」
「い、いえ、そんな。お礼を言われるほどのことでは」
北内香織、清水雛、吉岡茉子。この三人の共通点は、中筋真人を慕っていること。
香織と茉子は真人への想いを別の形に昇華させ、雛は現在進行形で真人に想いを寄せている(綾奈から奪うつもりは毛頭ない)。
三人にとって特別な存在である真人の誕生日プレゼントを三人で買いに来たのだ。
「でも、中筋君の誕生日を私たちに教えて良かったの?」
「え? 何でですか?」
「だって、マコちゃん一人でプレゼント買って中筋君に渡したら、マコちゃんは中筋君の感謝の気持ちを独り占め出来るのになって」
「そもそも真人お兄ちゃんは綾奈さん一筋ですし、私たちがお兄ちゃんを取り合うのは不毛でしかないですから」
「確かにね」
「私たち三人でプレゼントを渡して、お兄ちゃんの感謝を三人で受けたいって思いました」
「マコちゃんって、本当にいい子よね~」
雛は茉子の頭を優しく撫でた。
「ひ、雛さん」
「でも、私が中筋君が好きって、二人ともよくわかったわね~」
「「え……?」」
二人は信じられないものを見るような顔を雛に向けた
香織と茉子は、初詣で雛が真人の腰を心配して、真人の患部を優しくさすっているのを見ている。その時の雛の表情から、雛が真人を想っていることは容易に想像出来た。
「ん~? 二人ともどうしたのかしら~?」
一方の雛は、二人がなぜそんな顔をして自分を見てるのかわからずにきょとんとしていた。
「いやいや雛先輩。逆になんでアレでわからないって思ったんですか?」
「ですね。おそらくあの場にいた全員が、雛さんが真人お兄ちゃんを好きって気付いてるはずですよ」
「……ただ」
「……そうですね」
「「中筋君(真人お兄ちゃん)を除いて」」
真人は自分に向けられる好意には超が付くほどの鈍感だ。
綾奈と付き合う前も、綾奈の好意はもちろん、茉子の好意も、香織が教室で真人を見ていたことにも全く気が付かなかった程だ。
「確かに、元日の夜に健ちゃん聞かれたわ~。『姉さん、真人が好きなの?』って~」
「それで、なんて答えたんですか?」
「正直に言ったわよ~。中筋君を少しだけ好きになっちゃったって~」
「「……」」
雛の言葉に苦笑する二人。それと同時に、雛の弟の健太郎も同じような気持ちになったんだろうな、とも……。
「確かに中筋君は一人の男の子として好きだけど、西蓮寺さんから奪うつもりなんてないわよ~。あの二人のラブラブなところを見るのはもっと好きだから~」
「雛さん。それを見て、自分も真人お兄ちゃんと……って思ったりしないんですか?」
「ん~……全く思わないって言ったら嘘になるけど、やっぱり好きな人の幸せが一番だから~」
「雛先輩、オトナだ……」
「二人はどうなの~? 中筋君とイチャイチャしてる場面を想像したりするの~?」
「もちろんしますよ」
「ですね」
香織も茉子も即答であった。
「私は中筋君が綾奈ちゃんと付き合ってからもたまに想像してましたね」
「私は一年以上片想いでしたから……正直数え切れないですね」
「そっか。マコちゃんは美奈ちゃんと遊ぶ為によく中筋君の家に行ったことがあるんだもんね」
「そうですね。高崎高校の文化祭で、真人お兄ちゃんの告白のスピーチを聞いて、あの時は隣にみぃちゃんもいたから、泣かないように必死でした」
「あのスピーチは確かに良かったけど~、マコちゃんは辛かったわよね~」
「はい。あの日は帰って一人で大泣きして、次の日も学校休みましたから……あはは」
「私はそのスピーチは聞かなかったけど、風見高校の文化祭で、二人が雛先輩の作ったコスプレ衣装を着てイチャイチャしてるのをこっそり見てたから、あの時はなかなか辛かったよ」
二人は当時のことを思い出したらしく、少ししんみりとしていた。
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