第273話 2日連続一緒にお風呂
「真人。腰、痛くない?」
そして夜。
綾奈は昨日からもう何度目か忘れる程のセリフを口にしていた。
「うん、大丈夫。ありがとう綾奈」
俺も何度目かわからない返事をした。
この部屋ではお互いの声が反響する。
そう。俺たちは二日連続で一緒にお風呂に入っていた。今は昨日同様、綾奈が俺の背中を流しているところだ。
夕食の時、綾奈は本当に今日も一緒にお風呂に入っていいかを母さんに聞いた。
絶対に断られるだろうと思っていたのだけど、意外にも母さんからOKをもらった。ただし、長風呂はダメだという条件付きで。
母さん、俺たちが
おそらくだけど、母さんは俺が綾奈に変なことをすると思ってそう言ったんだろう。実際に俺はまだ腰が痛いので、自分からはイチャつきにいきにくい。
だけど母さんはひとつ誤算をしている。それは、綾奈が俺よりもイチャつきたがっている可能性だ。
頻繁にイチャイチャしている俺たちだけど、どちらかといえば綾奈の方から俺にくっついてくることのほうが多い。
それに、綾奈は今日の午前中に、出来るだけ俺とは離れたくないと言っていた。
だから、綾奈がいつどこで仕掛けてきたとしても何ら不思議ではないのだ。
そんな綾奈は、昨日と同じ白いフリルの付いたビキニを着ている。
俺も水着を引っ張り出した。昨日の綾奈のサプライズ突撃と違い、今日はお互い一緒に入ると決めていた。
ただ、俺の着ている水着は、中学までの物だったので、ぶかぶかでサイズが合っていない。
ずり落ちないように紐をしっかりと締めた。
綾奈は俺の背中を昨日同様、しっかりと洗ってくれた。
「ありがとう綾奈。前は自分でやるから貸して」
俺は綾奈からタオルを受け取ろうとして手を出した。
しかし、綾奈は俺の手にタオルを置こうとしない。もう背中は十分すぎるほど洗ってくれたのに、どうして?
その理由は、すぐに知ることとなる。
「あのね真人。ま、前も洗っちゃ、だ、ダメかな?」
「……はぇ?」
思ってもみなかった綾奈の発言に、いつもよりマヌケな声が出てしまった。
というか、いきなりどうしたんだ? 俺のお見舞いに来てくれたとき、俺が汗を拭くために上半身裸になったらそれだけでセルフ目隠しをした綾奈が、自分から前も洗おうとするなんて。
ただ、嬉しい申し出なのは間違いない。
「ありがとう綾奈。それはまた今度頼むよ。今日は自分で洗うから大丈夫だよ」
俺は綾奈の申し出を断った。
水着でとはいえ、綾奈と一緒に風呂に入っているこの状況に慣れていない。昨日今日で慣れるレベルの問題ではない。
今だって心臓はドキドキしてるのに、綾奈が俺の正面に来ようものなら、いろんな意味で落ち着かなくなってしまう。
だから、そういうのはもうちょっと時間が必要なのだ。
「……わかった。変なこと言ってごめんね」
「謝らないでいいよ。綾奈の気持ち、すごく嬉しかったから」
「うん。……えへへ」
綾奈はふにゃっとした笑みを見せながら、俺にタオルを渡した。
俺はササッと前を洗い、シャワーで流す。
交代で綾奈も自分の髪、そして身体を洗い出したので、俺は湯船に浸かった。
綾奈の身体、本当にシミ一つない綺麗な身体をしている。自分の身体を念入りに洗う綾奈を見ているだけでドキドキする。
やがて身体を洗い終えた綾奈も湯船に入ってきた。浴槽にはっていたお湯が勢いよく流れる。
うちの浴槽はあまり大きくないので、二人も入るとちょっとだけ窮屈に感じる。
湯船に入った綾奈は、俺に背中を預けるではなく、俺の正面に向く感じで入ってきた。
俺は、それでこの後の展開が読めてしまった。
「……ねぇ、真人」
綾奈の顔が赤い。お風呂に入っているからなのか、この後に続く言葉を言おうとしてドキドキしているのかはわからない。
「なに? 綾奈」
一方の俺も、この後に続く綾奈の言葉がわかってるんだけど……いや、わかっているからこそ、心臓が痛いくらいにバクバクしている。
「……ちゅう、していい?」
「っ!」
予想通り、ど真ん中ストレートだ。
だけど破壊力抜群なため、わかっていてもすぐには返事を返せなかった。
「……もちろん。おいで」
「……うん♡」
綾奈は俺に密着し、膝立ちで俺の肩に手を置いた。
シャンプーをして濡れた綾奈の髪から水滴が落ち、それが俺の胸へと落ちる。
普段は前髪で隠れてあまり見ることの出来ない綾奈のおでこ。それがあらわになって妙にドキドキする。
「腰、痛くない?」
「大丈夫」
「痛くなったら言ってね?」
「ありがとう。あまり長いと母さんが怪しむから……」
「うん。ここでは少しだけ……」
「俺の部屋で」
「い~っぱい、ちゅうする♡」
短い会話を終え、綾奈が唇を重ねてきた。それと同時に、自分から舌を出てきた。
結局長い時間キスをして、風呂から出ると母さん達に怪しまれたが、俺の腰を言い訳にしてなんとか回避に成功した。
それから俺の部屋に行き、綾奈がまた俺の腰をマッサージしてくれたあと、時間を忘れてキスをし続けた。
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