第267話 2人でおばあちゃんの家へ

 ドラッグストアを出て、俺と綾奈は幸ばあちゃんの家にやってきた。

 幸ばあちゃんの家は木造二階建てで、なかなか大きく立派な家だった。

 俺の腰はサポーターをしたおかげで、かなりマシになった。いや、これマジで凄いな。

「まあまあ。綾奈、真人君も。あけましておめでとう。よく来てくれたわねぇ。綾奈。着物、似合ってるわよ」

 玄関に入ると、幸ばあちゃんは笑顔で出迎えてくれた。

「ありがとうおばあちゃん。あけましておめでとう」

「幸ばあちゃん、お久しぶりです。あけましておめでとうございます」

 俺たちは幸ばあちゃんに新年の挨拶をし、そのままリビングに通された。

 幸ばあちゃんの家のリビングは畳が敷かれ、真ん中には丸いローテーブル、そして壁側には大きい液晶テレビがあった。

「おぅ、来たか綾奈」

 リビングにいたご老人から渋い声が聞こえた。この人は綾奈のおじいちゃんなのだろう。

「おじいちゃん! あけましておめでとう」

「うんうん。やっぱり可愛いなぁ綾奈は。それから……」

 だいぶ綾奈を溺愛してるんだなぁと思いながら、綾奈とおじいさんのやり取りを見ていたら、おじいさんが俺を睨むように見てきた。

 俺は自然と背筋を正した。

「は、はじめまして。綾奈さんとお付き合いをさせていただいてます、中筋真人といいます!」

「一昨年ぐらいに幸子に聞いていたが、お前がそうか。俺は綾奈の祖父の新田にった銀四郎ぎんしろうだ。よろしくな真人君」

 ファーストインプレッションでちょっとおっかないイメージを持ってしまったけど、どうやら顔と口調だけで、根はいい人みたいだ。

「は、はい! よろしくお願いします銀四郎さん。……いてて」

 つい勢いよく頭を下げたものだから、腰が痛くなった。

「あら? どうしたの真人君」

「真人。無理しないで。ほら、ゆっくり座ってね」

 俺の様子に、すぐに駆け寄ってきてくれた綾奈は、俺を支え、座るサポートをしてくれた。

「ありがとう綾奈」

「どういたしまして。おじいちゃん、おばあちゃん。実はね───」

 綾奈は幸ばあちゃんと銀四郎さんにも、俺が腰を痛めた経緯を話してくれた。

「まあ! そんなことがあったのね。綾奈を守ってくれてありがとう真人君。腰、大丈夫かしら?」

「ええ。さっき薬局でサポーターも買いましたから大丈夫ですよ。ありがとうございます幸ばあちゃん」

 幸ばあちゃんは心配そうに俺の腰に手を当ててくれた。幸ばあちゃんの優しさに心が温かくなる。

「俺からも礼を言わせてくれ。幸子の散歩の手伝いだけじゃなく、綾奈まで守ってくれて……。頭が上がらねぇや。ありがとうな真人君」

「いえ、そんな。頭を上げてください。俺は当然のことをしただけですから」

 綾奈を、お嫁さんを守るのは当然だし、幸ばあちゃんも歩道橋を上がるのを苦戦していたから声をかけただけだ。

「綾奈、真人君と仲良くするんだぞ?」

「もちろんだよおじいちゃん」

「うふふ。綾奈と真人君はとっても仲良しなのよ。千佳ちゃんと三人で登校してるのをよく見かけるのだけど、二人は本当に仲睦まじいし、真人君も千佳ちゃんと仲良くしてるのよ」

「千佳ちゃんか。しばらく見てねぇな。綾奈、千佳ちゃんは元気か?」

「ちぃちゃんもとっても元気だよ。彼氏も出来てすっごいラブラブなんだよ」

 銀四郎さんも千佳さんを知ってるのか。銀四郎さんの様子から、千佳さんはこの新田夫妻にも好かれているみたいだ。まぁ、千佳さんなら当然か。

 そう言えば、千佳さんの家族構成って知らないな。

 綾奈は麻里姉ぇがいるし、健太郎には雛先輩がいる。一哉と茜は共に一人っ子だ。

 千佳さんには兄弟はいるのだろうか……。今度聞いてみよう。

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