第258話 シュンスケ君のお兄さんを発見

 境内の裏の雑木林へとやってきた私とシュンスケ君。

 今日は晴天で、絶好の初詣日和なんだけど、木が鬱蒼と立っていて、あまり太陽の光が入らない薄気味悪い場所だ。

 私は怖いのが苦手なので、シュンスケ君のお兄さんがいないのを確認したらすぐに離れたい。

 シュンスケ君がいる手前、怖がる素振りは見せたくないから、なんとか精神を奮い立たせてなんでもないように振舞っている。

 うぅ……、そうだ。こんな時は真人を思い浮かべて怖い気持ちを紛らわそう。………………かっこいい。好き♡

駿輔しゅんすけー! どこだー!?」

「はっ!」

 この近くでシュンスケ君を呼ぶ声がして、私は妄想の世界から強制帰還した。……むぅ、もう少しで真人とちゅう出来たのに……。

「お兄ちゃんだ!」

 お兄さんの声を聞いたシュンスケ君は、私の手を引きながら声がした方へ走っていく。私は草履ぞうりを履いているので、転ばないよう気をつけながら手を引かれていく。

 程なくして見えたのは、一人の男子だった。

 身長は私より高くて、顔も確かにかっこいいと思う。綺麗にセットされた短髪に、細い体格。シュンスケ君の言った通り、この男子はモテるんだろうと理解した。

 私には大好きな旦那様がいるから、それ以上の感想はこれといってないけど。

「っ!」

 シュンスケ君のお兄さんは私を見て頬を赤らめていた。

 シュンスケ君は私の手を離し、駆け足でお兄さんの傍へと向かっていった。無事に見つけられて良かった。本当に。

「お兄ちゃん。?」

「?」

 この兄弟はなんの話をしているんだろう? 私は首を傾げながらそう思った。

 でも、無事にお兄さんを見つけられたから、私は真人の元へ戻ろうかな?

「シュンスケ君、良かったね。お兄さんと合流出来て」

「うん!」

「もうはぐれたらダメだよ。それじゃあね」

 私はシュンスケ君に手を振り、兄弟に背を向け歩き出そうとした。

「あの、待ってください! 綾奈先輩!」

「え?」

 シュンスケ君のお兄さんが突然私を呼び止めてきた。


 シュンスケ君のお兄さんに呼び止められ、驚いた私は後ろを、ついさっきまで向いていた方向を再び見た。

 私の名前を知っているということは、やっぱり彼は私の後輩で、美奈ちゃんとマコちゃんの同級生の子なんだ。

 シュンスケ君のお兄さんを見ると、彼は頬を赤らめたまま、口を真一文字にし、真剣な表情で私を見つめている。

「えっと、どうしたのかな?」

 早く真人のところへ戻りたかったけど、呼び止められて無視することは私には出来ないので、彼が話し出すのを促した。

「あ、えっと……俺、横水よこずい修斗しゅうとっていいます」

「私は西蓮寺綾奈です」

 突然の自己紹介に少し面食らってしまったけど、私は落ち着いて自己紹介をした。

 横水君はシュンスケ君に耳打ちをすると、シュンスケ君は元来た道を走っていってしまった。

 え? 迷子だったんじゃないの?

「その、知ってます。俺、綾奈先輩の後輩ですから」

 やっぱりそうだった。

「そうなんだね。……じゃあ、私はこれで」

 私は話を切り上げてここから立ち去ろうとした。だけど……。

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