第257話 シュンスケ君の兄を探して

 シュンスケ君という男の子から、「お兄ちゃんを一緒に探してほしい」とお願いされた。

 みんなで探そうと思ったけど、なぜかシュンスケ君は私一人を指名してきた。

 私たち十人全員で探せば見つかる時間も短縮されると思うんだけど。

 もしかして、大人数で探されるのが恥ずかしいのかな? 迷子になっちゃったけど、あまり周りの人には迷子ですって伝わるのが嫌なのかも。私も……うん。少し恥ずかしいかも。

 でも、本音を言えば、真人のそばを離れたくない。

 今日は本当に、可能な限りずっと一緒にいたい。真人に触れていたい。それが無理なら、せめて目の届く範囲にいたい。

 だから、早くシュンスケ君のお兄さんを見つけて、真人の元へ戻りたい。

「シュンスケ君のお兄さんってどんな人なの?」

 私は、手を繋いで私の右側にいるシュンスケ君に、お兄さんの外見を聞いた。どんな人かもわからないんじゃあ、私は探しようがないから。

「んっとね。身長はお姉ちゃんより高くて、かっこよくて、サッカー部のエースなんだよ」

「そうなんだ。お兄さんすごいね。そのお兄さんの歳ってわかる?」

「え~っと、十四歳だったと思う」

「シュンスケ君とけっこう歳が離れてるね」

 歳の離れた兄弟。なんだか私とお姉ちゃんみたい。

 十四歳ということは、中学二年生かな? この神社に初詣に来たなら、おそらく私の後輩に当たる人なのかな。

 美奈ちゃんやマコちゃんの同級生だと思うから、二人ならその人を知っていた可能性もあったなぁ。

 今更言っても仕方ないから、頑張ってシュンスケ君のお兄さんを探そう。


 それからも私は、シュンスケ君のお兄さんの特徴を聞きながら、神社内を探した。

 どうやらシュンスケ君のお兄さんは、サッカーはかなりの腕前みたいで、プレーしている時の姿はすごくかっこいいみたい。

 シュンスケ君も、そんなお兄さんに憧れてサッカーをしているらしい。

 見た目もかっこよく、華麗なボールさばきで女子のファンがいっぱいいて、告白も何度もされているとシュンスケ君は言った。

 シュンスケ君は、本当にお兄さんを尊敬していることがわかる。

 私もお姉ちゃんは大好きで尊敬している。普段は優しいけど、部活は厳しいし、たまにイタズラしてくるのには少し困ってるけど、それも込みでお姉ちゃんは大好きだ。

 その後もシュンスケ君と他愛のないお話をしながらお兄さんを探してみたけど、お兄さんは見つからなかった。

 向こうもシュンスケ君を探していて、すれ違いになっているのかも。

 今、境内のそばにいるけど、どうしよう。……ここで待ってた方がいいのかもしれない。

「シュンスケ君。ここでお兄さんが探しに来てくれるのを待ってみる?」

「う~ん……」

 シュンスケ君はどうするかを考えているみたい。

「お姉ちゃん。もう一箇所探してない所があるから、そこも探してみない?」

「探してない所?」

「うん」

 聞き返した私に首肯し、シュンスケは境内を指さした。

 私はそれで理解した。

 境内の裏手にも、確か一般の人が立ち入れる雑木林みたいな場所があったはず。でも、特に何もない場所だから、ほとんど人は立ち入らない場所でもある。

 でも、この子のお兄さんは、小学生のシュンスケ君なら、そんな場所にも行く可能性があると考慮して、そこを探しているのかもしれない。

 それに、ここまで探したんだ。どうせなら全部の場所に行き、お兄さんがいるか確かめるのも悪くないかな。

「わかった。じゃあ境内の裏も探してみよっか」

「うん! ありがとうお姉ちゃん」

 ちゃんとお礼を言えるなんて、この子は偉いなぁと思いながら、私は再びシュンスケ君の手を取って境内の裏へと移動を開始した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る