第254話 真人を好きだった者同士の新たな友情
「それにしても、美奈ちゃんもだけど、吉岡さんも可愛いね」
お、北内さんが茉子に話しかけに行った。友達と茉子が仲良くやってくれると嬉しい。
二人を眺めていたら、北内さんが自分の顔を茉子の耳へと持っていき、耳打ちを始めた。
「吉岡さんも中筋君が好きだったんでしょ?」
「どど、ど、どうしてそれを!?」
茉子が突然顔を真っ赤にしてあたふたしている。一体茉子に何を言ったんだ北内さん。
「ふふ。私も中筋君が好きだったから、なんとなくわかるんだよね」
「そ、そうなんですか!? うぅ~、真人お兄ちゃん、やっぱりモテる」
「あ、今はそう思ってるんだね」
「あ……やっちゃったぁ。……その、北内先輩。私が真人先輩をお兄ちゃんって呼んでるのは、本人の他に、みぃちゃんと西蓮寺先輩しか知らないので、出来ればご内密にしていただけると……」
「うん、わかったよ。ところで、中筋君がお兄ちゃんなら、綾奈ちゃんはお姉ちゃんになるのかな?」
「ど、どうでしょう? 西蓮寺先輩も、私が真人お兄ちゃんを好きだったのは知ってるみたいなので、お姉ちゃんって呼んだら不快に思われるかもしれません」
「ま、綾奈ちゃんに限ってそれはないと思うけど、おいおいって感じだね。それにしても……」
「はい……」
しばらく耳打ちをしたと思ったら、北内さんと茉子は俺を……いや、相変わらず俺の腰をさすっている雛先輩を見ているみたいだ。
「せ、先輩! もういいですから」
「あらそう? 痛かったらいつでも言ってね~?」
なんか、やたらボディータッチしてくるな。今まではそんなことなかったのに。
「清水君のお姉さん、雛先輩も……絶対そうだよね?」
「ですね。あんなにあからさまなのに、なんで真人お兄ちゃんは気づかないんでしょう?」
「中筋君は鈍感だからね。私がクラスでチラチラ見てたのも全く気づかなかったし」
「確かにそうですね。私が隠していたのもあるんですけど、真人お兄ちゃんは私の好意にも全然気づいてくれませんでしたから」
「本当、綾奈ちゃんしか見えてないから。中筋君はやっぱり中筋君だよねー」
「はい。真人お兄ちゃんはやっぱり真人お兄ちゃんです」
北内さんと茉子はヒソヒソと話をしたかと思ったら、二人して俺をジト目で睨んでくる。え? 何?
「ぷっ、あはは」
「ふふ」
少しの間、俺を睨んだと思ったら、二人は揃って吹き出した。
「中筋君を好きだった者同士、これから仲良くしてくれたら嬉しいな」
「こちらこそです。よろしくお願いします。北内先輩」
「香織でいいよ、マコちゃん」
「はい。香織さん」
再度、耳打ちで話し出したと思ったら、今度は笑顔で握手を交わした。どうやら新しい友情が芽生えたようだ。
「今度、雛先輩にも話を聞こうよ」
「ですね。ちょっと今から楽しみです」
どうやら雛先輩とも親睦を深めようとしている。こうして交友関係が広がっていくのは見てて嬉しくなるな。
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