第251話 少し後ろにいたのは……

 参拝の列に並んでから十分と少し。

 俺達は二列で並びながら自分たちの順番が来るのを待っていた。ちなみに俺は綾奈と隣同士だ。

 一哉と健太郎も、茜と千佳さんと隣同士で並んでいて、そうなると必然的に雛先輩と北内さんが隣同士になるわけで、ほぼ初対面な二人だから、会話もなく気まずくなるのではないかと思ったのだけど、意外とそうはならなかった。

 雛先輩が北内さんに割と積極的に話しかけて、北内さんも雛先輩の雰囲気にすっかり心を許した様子で、既に仲良くなっていた。

「あの二人、もう仲良くなってるね」

 それを見た綾奈も俺と同じことを思ったようだ。

「うん。最初はどうなることかと思ったけど、杞憂だった。ところで綾奈は何をお願いするの?」

「えー、秘密だよ。真人は?」

「俺も秘密」

 そんな、初詣にありがちな会話をしていたその時、ズボンのポケットに入れていたスマホが振動した。どうやら誰かからメッセージが来たようだ。

 俺はスマホを取り出し、メッセージを確認すると、差出人は美奈だった。

【お兄ちゃん、後ろ後ろ】

 そんなメッセージの後に、何やら可愛らしいヤギのスタンプが送られてきた。

「後ろ?」

 腰を痛めているため、身体ごと後ろを向く。あ、後ろに並んでいた人が少しびっくりしてる。ごめんなさい。

「どうしたの真人?」

「いや、美奈からメッセージが……って、あ」

 俺達のグループから少し後ろ、手を上げブンブンと振っている女の子がいた。うん、美奈だ。

 そして列の横から、茉子がちょこんと顔を出して、遠慮気味に手を振っていた。

 俺は二人に手を振り返した。

 俺の様子を不思議に思った綾奈も後ろを振り向く。

 すると、すぐ後ろに並んで、わいわいと話をしていた男子学生二人組の動きが突然ピタッと止まった。きっと綾奈に見惚れているんだろう。

 綾奈が美奈達に気付いて、二人に笑顔で手を振る。

 俺はその間に美奈に、後で合流するかどうかをメッセージで聞くと、直後に合流したいと返信が来た。

「みんな、ちょっといい?」

 俺は、みんなにもそのことを伝えようと前に並んでいる六人を呼んだ。

「どうした真人?」

「うん。実は俺たちの少し後ろに美奈……俺の妹とその友達がいるんだけど、お参りの後で合流したいって言ってるんだけど良いかな?」

 雛先輩と北内さん以外は美奈を知っているし、二人も断るような性格はしていないので、問題ないとは思いながらも念の為確認をとることにした。

「え、美奈ちゃんいるの!? 私も久しぶりに会いたい!」

「だな。俺もしばらく会ってないし」

 一哉と茜は当然ながらオッケーっと。美奈も喜ぶだろう。

「僕も久しぶりだから挨拶したいな」

「もちろんあたしもオッケーだよ」

 健太郎と千佳さんも大丈夫っと。美奈の奴、イメチェンした健太郎を見たらびっくりするだろうな。

「中筋君、妹いたんだ。私も見てみたいからオッケーだよ」

「私は健ちゃんから聞いていたから、見てみたいと思ってたの~」

 北内さんと雛先輩も大丈夫っと。友達や先輩が美奈と仲良くしてくれるのは俺もありがたい。

「ありがとうみんな。じゃあ美奈にメッセージ送るよ」

 俺は美奈に、合流オッケーのメッセージを送った。

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