第249話 香織、合流
それからしばらく談笑を続けた俺たち六人は、そろそろお参りをしようと、参拝の列に並ぶために移動を開始しようとした時のことだった。
「きゃ!」
突然、手を繋いでいた綾奈から短い悲鳴が聞こえてきた。
一体何事かと思い、綾奈を見ると、誰かが綾奈を後ろから抱きしめていた。
そして、その抱きしめている人を見たら……。
「綾奈ちゃん見つけた」
「き、北内さん!?」
なんと、俺達男子三人組のクラスメイトで、昨日綾奈と友達になった北内香織さんだった。ちなみに北内さんは私服だ。
「え? 香織ちゃん!?」
突然の北内さんの登場に、俺たち六人は驚きを隠せないでいた。そもそも。
「北内さん!? なんでここにいるの?」
「なんでって、初詣で来たんだよ中筋君」
いや、そうじゃなくて。
「北内さん。家はこの辺じゃないでしょ?」
初詣なら、北内さんの家の最寄りの神社で済ませればいいことだ。それなのに、わざわざここの神社に来る必要は全然ない。
「ほら、昨日あのアーケードで二人に会ったでしょ? 中筋君と綾奈ちゃんの家がこの辺だと思って、一番近い神社をスマホで調べたらここだったから、多分綾奈ちゃんも初詣をするならここだろうって思って、今日はここに来ちゃった」
え、それってつまり。
「北内さんは、綾奈に会いたいがためにわざわざここまで来たってこと?」
「そうだよ」
北内さんは、平然と言ってのけた。
友達になってまだ二日目なのに、既に綾奈を溺愛している。
「え、ちょっと待って。真人、なんで綾奈と北内がこんなに仲良くなってんの?」
「確かにな。学校違うし、合唱部の合同練習の時に偶然すれ違った程度のはずだろ?」
千佳さんと一哉が言った。
この二人も……千佳さんは学校は違えど合唱部(俺と一度哉は臨時部員)なんだ。だからこそ感じる疑問だよな。
俺は昨日、アーケード内で北内さんと偶然会った事、そして友達になった経緯を話した。茜は知らないと思ったから北内さんが俺に好意を持っていたことを除いて。
「へえ。そんな事があったんだね」
健太郎が言った。
「そうなんだよ清水君」
「…………」
千佳さんがなんとも言えない表情で北内さんを見ている。もしかして、綾奈と友達になったこと、あまり良く思ってないとか……?
「えっと、宮原さん……だよね? 私が綾奈ちゃんと友達になるのは嫌、だった?」
北内さんも、千佳さんが出している空気を察知したようで、おそるおそる聞いた。
「え? あーいや、そんなことはないよ。あんたがいきなり綾奈に抱きついてびっくりしたっていうか、昨日の今日で綾奈とすっかり打ち解けていて、ちょっと複雑っていうか……だから別に反対はしてないから。その、そんな風に思わせてごめん」
なるほど。つまり。
「千佳さん、ヤキモチ焼いてるんだ」
「真人うっさい!!」
「いった!!」
千佳さんは頬を赤く染めながら俺の腰を思いっきり平手打ちした。当然ながら大ダメージだ。
「真人、大丈夫!?」
「う、うん。なんとか」
「さっきのは真人が悪いな」
俺もそう思うから、一哉に反論できないな。
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