第243話 真人、西蓮寺家に到着

「ついた……ふぅ」

 午前九時を少し過ぎた頃、綾奈から借りていたアイドルのCDが入った袋を持った俺は西蓮寺家に到着した。

 いつもなら十分くらいで来れる距離なのに、今日は十五分くらいかかってしまった。

 一晩経ったら腰も少しは良くなってるだろと思ってたんだけど、甘かった。大したことはないとはいえ、腰の痛みは昨日と同じで全然良くなってない。綺麗な姿勢で歩けば大丈夫だと思っていたが、その綺麗な姿勢を維持するのが大変で、やっぱり腰に負担がかかる結果となってしまった。

 ダイエットはしたけど、姿勢を矯正したわけではなかったからなぁ。

 これからは、そういった部分も意識しておこう。

 なんだかんだで三日坊主になりそうな決意をして、俺はインターホンを押した。

 数秒待つも応答はなく、俺はもう一度押そうと手を伸ばしたその時、家の中からパタパタと音が聞こえてきた。どうやら直でお出迎えしてくれるスタイルのようだ。

「いらっしゃい真人」

 出迎えてくれたのは、綾奈のお姉さんの麻里姉ぇこと松木まつぎ麻里奈まりなさんだった。

「麻里姉ぇ……」

 麻里姉ぇの姿を見た俺は固まった。

 麻里姉ぇは着物を着ていたのだ。

 藍色の着物はクールな麻里姉ぇにとても似合っていて、長い髪も後ろでお団子状にセットされている。そして何度か見たことのあるメイクとは違うメイクをしていて、あまりの美しさに俺は固まってしまった。

「真人、どうしかしたのかしら?」

 俺のリアクションを麻里姉ぇはにこにこ……いや、ニヤニヤしながら見ている。この人絶対にわかってて言ってるよな。

「からかわないでよ麻里姉ぇ。……その、とても綺麗で、似合ってるよ」

 俺は照れながらも素直な感想を麻里姉ぇに伝えた。

「ふふっ。ありがとう真人」

 麻里姉ぇは微笑んでお礼を言った。

「おはよう真人君」

 麻里姉ぇの後ろから姿を見せたのは、麻里姉ぇの旦那さんの松木翔太しょうたさんだ。この人相変わらずかっこいいな。

 翔太さんはカジュアルな服に身を包んでいたが、どんな服を着ても似合うしかっこいいんだよなぁ。

「おはようございます翔太さん。それからお二人とも、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

 麻里姉ぇの着物姿に見惚れていて、言えないでいた新年の挨拶も言った。

「うん。あけましておめでとう。今年もよろしくね真人君」

「あけましておめでとう真人。こちらこそ、今年もよろしくお願いするわね」

 二人も挨拶を返してくれた。

 俺は頭も下げたかったけど、腰が痛くなるのがわかっているので、目上の人に若干失礼だと思いつつも、言葉だけにとどめた。

「いつまでもここにいたら寒いでしょ? さ、早く中に入りましょ」

「お、お邪魔します」

 麻里姉ぇに促され、俺は西蓮寺家に入った。

「綾奈はまだ着替えているから、リビングに入って待ってて」

 そう言って、麻里姉ぇは着物のままキッチンに移動した。

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