第240話 綾奈の帰宅

 真人の家から車で十分もしないうちに、私は自分の家へと帰ってきた。

 お泊まりがスタートしてまだ一週間くらいだけど、なんだか久しぶりの感覚になる。お泊まりが楽しすぎて、毎日とても充実した時間を過ごしているからそう思うのかな?

 私はインターホンを押して、少しするとパタパタというスリッパの音が大きくなって、やがて玄関が開かれた。

「おかえり綾奈」

 出迎えてくれたのはお母さんだった。後ろにはお父さんもいる。

「ただいま。お母さん、お父さん」

 私は両親に挨拶をした。

 あ、そうだ。二人に真人のご両親を紹介しないと。お母さんは良子さんと既に会ってるけど、雄一さんにはまだ会ってないし、お父さんにとったら二人とも初対面だしね。

「えっと、お母さんはもう良子さんは知ってると思うけど、こちら、真人のご両親の良子さんと雄一さんだよ」

 私が両親に二人を紹介すると、両家の親同士ははじめましての挨拶や新年の挨拶を交わした。

 それから玄関で少しの間談笑して、お母さんが「よろしければお上がり下さい」と言ったけど、真人のご両親はそれをやんわりと断って、自分達の家に帰っていった。

 多分、真人が気になるからかな?

 私の胸がチクリと痛みだす。

 真人はもう気にしないでと言ってくれたから、私も気にしすぎるのは逆に真人に申し訳なくなるから普通に振舞っていたけど、やっぱりふとした事で責任を感じてしまう。

「綾奈? どうした?」

「う、ううん。なんでもない」

 お父さんの声に我に返った私は、首と手を軽く振り、言葉通りなんでもない風を装った。

「そうか。ところで真人君はどうしたんだ?俺は真人君も一緒に来るものだと思ってたけど」

「真人は……」

 私は気まずいながらも、真人のことを正直に打ち明けようとした。けどその瞬間、お母さんがパンっと音を出して両手を合わせた。私とお父さんは二人して驚き、お母さんを見る。お母さんはにっこりしていた。

「まぁ、いいじゃない。真人君だってたまにはそういう時もあるわよ。それより寒いから早く中に入りましょ」

 私はお父さんと共にお母さんに背中を押されながら、そのまま家に入った。

 リビングに入ると、テレビでは新春特番が放送されていた。人気のお笑い芸人さん達が自慢のネタを披露している。

 テレビから流れる漫才を聞きながら、私は久しぶりの我が家のリビングを見渡す。なんか、私が真人の家に行く前より綺麗になってる。きっとお母さんが大掃除をしたんだ。

 そういえば、昨日私が真人と一緒に買い出しに出かける前、良子さんも大掃除に取り掛かってたっけ。

 私の部屋は普段から片付いているけど、数日家を空けちゃったからきっとホコリを被ってると思うから、後で少し掃除しよう。

「初詣は何時から行くのかしら?」

「細かくは決めてないけど、午前中には行くよ」

 ちぃちゃん達とは現地で会うことになっているから集合時間は特に決めていない。だから多少遅く行っても大丈夫。真人の腰も心配だからありがたい。

「なら少し早めに着付けをしましょうか。綾奈も早く真人君に見せたいでしょ?」

「う、うん」

「それじゃああなた。綾奈の着付けをしてくるから真人君が来たらよろしくね」

「わかった」

 私はお父さんに軽く手を振り、リビングを後にしてお手洗いに行き、そして晴れ着を着るために自室へ向かった。

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