第238話 (4章前編最終話)その一言を見逃さない親友

 それから俺たちは、新年の挨拶を交わしている間も通知音が鳴り止まなかったスマホを手に取りメッセージを確認した。


 健太郎【真人と西蓮寺さんはもう寝ちゃったのかな?】

 一哉【いや、西蓮寺さんはともかく、真人はまだ起きてるだろ】

 綾奈もバッチリ起きているぞ。

 千佳さん【綾奈もきっと起きてるよ。真人の家に泊まってるんだから一人だけ寝てるなんてのはないだろうね】

 茜【え? 綾奈ちゃん、真人の家に泊まってるの!?】


「そういえば、お泊まりのことを三人に言ってなかったな」

「うん。言うタイミングなかったもんね」

 本当は忘れていたんだけど、冬休みにはいってからはマジで千佳さんとしか会ってないから言う機会もなかった。


 一哉【となると、二人ともやることやってるからメッセージどころじゃないのか】


「ま、ましゃと……」

 一哉が新年早々下ネタをぶっ込んできて、それを見た綾奈が顔を真っ赤にしながらあわあわしている。……と思ったら、すごいスピードでフリック入力をし始めた。


 健太郎【でも、既読は全員分ついてるよ】

 綾奈【みんな、あけましておめでとう!】


 健太郎のメッセージとほぼ同時に綾奈かメッセージを送信した。


 茜【綾奈ちゃんあけおめー】

 一哉【西蓮寺さん、あけましておめでとう。あれ?真人は?】

 俺【あけましておめでとう。ちゃんと見ているぞ】


 メッセージを送らないと、初詣の時に色々誤解されそうだったので、俺もメッセージを送った。


 茜【真人もあけおめ!今は綾奈ちゃんと一緒にいるの?】


 さて、茜のメッセージにどう返そうか。ここで馬鹿正直に返すと、色々誤解されて話がめんどくさい方向に行くかもしれないから、ここは綾奈は美奈の部屋にいると誤魔化すか。


 綾奈【今は真人と一緒にいるよ。二人でベッドに入ってメッセージを見てるよ】


「ちょっ、綾奈!」

 俺が入力しようとした矢先、綾奈が正直に答えてしまった。しかもベッドに入ってという現状も送信してしまった。これ、絶対に誤解されるやつだ。


 一哉【マジか! 二人でベッドに入ってって……え? 姫はじめ?】


 ほらな。まっさきにこいつが反応すると思ったよ。

「真人、姫はじめって?」

「綾奈は知らなくていいから!」


 千佳さん【……あんた達、真人のご両親や美奈ちゃんも近くにいるのに何やってんの?】

 俺【いや、誤解だから!】

 茜【も~誤魔化さなくていいって~。おめでとう真人】


 ぐ、こいつら……!

 そもそも弘樹さんとの約束で、高校生らしい節度あるお付き合いをしろと言われているし、それは風見高校の文化祭でみんな揃ってる時に言われたから、こいつらもその場にいて、あんな濃いイベントなんだから絶対に覚えてるはずだろ!?

 ……まぁ、今はその制限が緩くなってるとはいえ、昨日……いや、日付変わったから一昨日か。

 一昨日みたいに俺から無闇にキス以上のエロいことはしないように心がけているけど。

「何かおめでたいことなの?」

 未だに状況を理解していない綾奈は呑気にキョトンとしている。

 俺は、綾奈に姫はじめの意味を耳打ちした。

「……え? …………ふえぇぇぇぇぇ!?」

 意味を理解した綾奈は、深夜にも関わらずに大声を上げた。その顔は茹で上がってるんじゃないかってくらい真っ赤になっていた。

「綾奈、今度から正直に話すのは控えような」

「う、うん。ごめんね真人」

 それから俺たちはなんとか誤解を解くことに成功した。

 新年早々疲れた俺たちは、トイレに行ったあとにそれぞれの部屋に入り眠りについた。



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 第4章(前編)はこれにて終了です。

 明日、2月8日の投稿はお休みさせていただいて、後編は明後日2月9日からスタートになります。

(間違えて)1日2話投稿した日があったから許してください。

 それでは、後編スタートをお楽しみに。

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