第214話 外れかけているタガ

 綾奈の言葉に照れてしまって、目を逸らし、右手の甲で口を隠す。

「照れてる真人、やっぱりかわいい」

 ……それはこちらのセリフなんですけどね。

「と、とにかく、逆ナンされても俺は絶対について行かないし、強引に来てもその強引は綾奈以外受け入れないから安心してよ」

 綾奈が俺の家に泊まりに来て今日で六日目。

 俺達は毎晩俺の部屋でイチャイチャしている。もはやそれが日課になっているまである。

「も、もうっ……バカ」

 綾奈もそれを思い出してしまったのか、耳まで真っ赤にして俺にかわいい罵声を浴びせて、俺の二の腕に頭突きをした。どうあっても俺と繋いでいる手は離さないようだ。

「ま、真人も……昨日は強引だったもん」

「そ、それは……」

 そうだった。昨日はいつも以上に気持ちがたかぶってしまって、いつもなら俺が一息入れるために唇離そうとして、綾奈がそれを嫌がり追撃してくるのだけど、昨日はそれが逆になった。

 それどころか、その勢いでむ……胸も触ってしまったんだった。

 あの時の綾奈の艶かしい声は今も鼓膜に焼き付いて離れない。

「……い、嫌だった?」

 俺の問いに、綾奈は照れながらも首を横に振った。

「い、嫌じゃないから。……安心して」

 そう言って俺に笑顔を向けてくれる。その笑顔を見て俺は顔が熱くなるのを感じた。

 ……綾奈の胸、大きかったな。

 俺の腕に抱きついてきた時とかに、その感触は伝わってきたのだけど、実際に触ったら、イメージしてた以上の大きさがあった。綾奈って、着痩せするタイプなのかもしれない。

 俺は昨夜のことを思い出し、手を繋いでない右手で、ワキワキと昨日の感触を思い出すような仕草をした。

「い、今思い出さなくていいの!真人のバカー!!」

 それに気づいた綾奈が顔を真っ赤にしながら叫んだ。

綾奈が叫んだことにより、俺たちの近くを歩いていた通行人の皆さんが、何事かと俺たちの方を見てくる。……確かにこれは反省しなければ。

俺と綾奈は苦笑いとお辞儀で対応した。

 でも、ここ数日は本当にタガが外れてきていてマズい。ここらで自重しないと、マジで弘樹さんとの約束を破りかねない。それだけは絶対にダメだ。

「ね、ねえ、綾奈?」

「ん~?」

 自重しなければならないため、俺は綾奈にある提案をするため名前を呼んだ。

この提案を綾奈に言っても、絶対に聞き入れてくれないのはわかってるけど、それでもあえて、ダメ元で言ってみる。

「今日はイチャイチャするの、やめとく?」

「絶、対、嫌♡」

 予想通り、俺の提案は秒で却下された。ですよねー。

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