第208話 優勝、そしてご褒美は誰の手に!?

「じゃあ、お待ちかねのご褒美タイムです!」

「よ、よろしくお願いします。真人せ……お兄ちゃん」

 そんなこんなでトーナメント戦は終了した。優勝者はマコちゃんだった。

 一回戦第一試合。俺と美奈の兄妹対決は辛くも俺が勝利して決勝へと駒を進めた。

 たまに美奈とやっているので、お互いの手の内は知っているため、なかなか決定打を与えられなかったのだけど、一瞬のスキをついて俺が強攻撃をヒットさせて勝利した。

 そして二回戦の綾奈とマコちゃんの試合。そこまでこのゲームに慣れていない綾奈に対して、マコちゃんは容赦のない連続攻撃を繰り出して、為す術なく綾奈が負けてしまい、俺とマコちゃんで決勝を行うこととなった。

 そして決勝戦。

 お互い近接戦が得意なキャラだけあり、序盤から積極的に攻めていって、割と良い攻撃も入れれたのだが、マコちゃんが操作するのは重量級のキャラ。攻撃を加えてもなかなか吹っ飛んでくれない。

 一方のマコちゃんは重量級キャラを使ってるとは思えないくらいの素早い連携攻撃で俺を翻弄し、俺のキャラはあと一発強攻撃をくらえば画面外に吹っ飛ばされるであろうダメージを負っていた。

 そんな中、超必殺技が打てるアイテムを入手し、見事マコちゃんのキャラに当てることが出来たのだが、マコちゃんはこれに耐えて万事休す。そこからはマコちゃんのラッシュ攻撃がことごとく決まり俺は負けてしまった。

 マコちゃんがこのゲームをやり慣れているのか、はたまた優勝賞品の為に本気になったのかはわからないが、とにかくマコちゃんはものすごく強かった。


 そして現在、俺とマコちゃんは顔を合わせて座っていた。

 マコちゃんは顔を赤らめ、こちらを上目遣いで見てもじもじしている。いざ撫でられると思うと照れているのだろう。俺もちょっと照れくさくなっている。

 マコちゃんの後ろに座っている綾奈は、「むぅ」っと頬を膨らませたり、悲しい表情をしたり、これからマコちゃんの頭を撫でる俺を止めようとしたりしている。

 やっぱり婚約者の俺が、他の女の子の頭を撫でるのをよく思っていないみたいだ。

 そんな綾奈の気持ちは痛いほどわかる。俺だって綾奈が俺以外の男に頭を撫でられるのを想像したら、胸が痛くなってどうにかなってしまいそうだ。

 そして、俺の後ろにいる美奈は、俺からはどんな顔をしているのかわからないけど、絶対ニヤニヤしているという確信がある。時折「ふふっ」という笑い声が聞こえてくるからな。

「わ、私、ちょっとお手洗いに行ってくるね!」

「あっ……」

 綾奈はそう言うと、小走りで俺の部屋から出ていって、そのまま階段を降りていった。

 トイレに行くのは本当かもしれないけど、俺には別の理由があるのではないかと思ってしまった。


 俺が自分以外の女の子(妹の美奈は除く)の頭を撫でるのを見たくない。


 そう思い、綾奈は咄嗟に部屋を出る理由を告げて出ていったんじゃないかと。

 綾奈が部屋を出ていく際に見えた横顔が、とても悲しく、辛そうにしていたから。

「さぁ、お兄ちゃん。早くマコちゃんの頭を撫でてあげてよ」

 いつまでも行動しない俺を見かねて、美奈が催促してきた。

 俺の両手はあぐらをかいた足の上から動かないままだ。

 本当にこのままマコちゃんの頭を撫でていいのか?

 たかがゲームの景品みたいなものだろ。深い意味はないって。

 でも綾奈は悲しそうな顔をして部屋から出ていったんだぞ?

 綾奈は見たくないから出ていったんだ。綾奈が見てないなら気にせずにマコちゃんの頭を撫でたらいいじゃないか。

 俺の中で、天使と悪魔が囁きあっている。

 そして俺は心が決まり、足の上に置いていた両手を、ゆっくりと上に上げていった。

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