第203話 4人でゲーム対決がしたい美奈

「みぃちゃん!」

「いらっしゃいマコちゃん」

 美奈は俺と綾奈の間をすり抜け、未だに玄関で靴を履いたままのマコちゃんに抱きついた。マコちゃん身長低いし、玄関と廊下の段差で美奈との身長差がさらに開いたから何だかバランスが悪い。

 俺は二人が抱きついている間に、来客用のスリッパを置いた。

「みぃちゃん、さっきの話は本当なの?」

「本当だよ。お義姉ちゃん、お兄ちゃんにめっちゃベッタリだよ」

 マコちゃんに何を言ってるんだ妹よ!

「み、美奈ちゃん!」

 事実なので反論出来ない。綾奈は頬を真っ赤に染めて美奈を注意したが、美奈は特に気にした様子はない。

「そ、そうなんだ……いいな」

「っ!」

 マコちゃんが最後にボソッと呟いた言葉に綾奈が過剰とも言える反応を見せた。

 ちなみに俺はよく聞こえなかった。

「美奈、そろそろマコちゃんを玄関からあげてあげよう」

 かれこれ三分以上はこうやって話をしている。遊びに来た妹の親友をこれ以上玄関で立ち話をさせるのは気が引ける。

「あ、ごめん。どうぞマコちゃん」

「ありがとうみぃちゃん。真人先輩も、スリッパありがとうございます」

 美奈がマコちゃんから離れたので、ようやくマコちゃんが靴を脱ぎスリッパに履き替えることが出来た。

「むぅ……」

 一方綾奈は、さっきは笑顔でマコちゃんと握手をしていたのに、今は何だかマコちゃんを警戒しているように見える。この短時間で何があった?

「飲み物持っていくよ。マコちゃんは何がいい?」

「いつもありがとうございます真人先輩。先輩にお任せします」

 マコちゃんは頭を下げたあと、にっこりと笑って言った。この子も学校ではモテてそうだな。

 俺はマコちゃんが来た時には大抵の場合、俺がドリンクを持って行っている。前回来た時はテスト勉強に集中していたから来ていること自体に気づくのが遅くなってしまったため、出すことが出来なかった。

「了解。後で美奈の部屋に持っていくよ」

「それなんだけどお兄ちゃん」

「どうした?」

 美奈が突然会話に入ってきた。今日は別の部屋で遊ぶのか……はたまたリビングで宿題でもするのか?

「今日はお兄ちゃんの部屋で、四人でゲームして遊ばない?」

「ゲーム?」

 珍しいな。マコちゃんが来ている時には俺の部屋には滅多に入らないのに。

「うん。マコちゃん、前々からお兄ちゃんとゲームしてみたいって言ってたし、お義姉ちゃんもいるから四人で対戦も出来るし……ダメ?」

 マコちゃんも普段からゲームするって美奈から聞いていたから、実は俺も一度、マコちゃんとゲームをやってみたいと前々から思っていたので大賛成だ。あとは……。

「俺は構わないよ。綾奈はどうかな?」

「……私も大丈夫だよ」

「?」

 綾奈も了承してくれたけど、間が少しあったな。

 それに表情も、微かにだけど警戒の色を残している。本当に微かなので親しい人じゃないとわからないだろう。

「じゃあ先に俺の部屋に入っていてくれ」

「良いんですか?」

「もちろん。遠慮しないでいいよ」

 俺の部屋に入るのは二回目だからな。そうじゃなくても部屋の主がいない間に先に部屋に入るのに多少の抵抗はあるだろう。だけどマコちゃんなら全然構わない。美奈の親友で信頼のおける後輩だし、俺も妹みたいに思っているし。

「わかりました。お先に上がらせてもらいますね」

「じゃあお兄ちゃん、先に上がってるね。マコちゃん、お義姉ちゃん。行こう」

 美奈はマコちゃんと綾奈を連れて先に俺の部屋に行こうとした。

「美奈ちゃん。ちょっと……」

 綾奈はそう言って美奈を手招きしている。

「どうしたのお義姉ちゃん?」

「……ちょっと聞きたいことがあるの。だからあっちでお話できないかな?」

 綾奈は美奈にひそひそと声をかけ、それから脱衣所を指さした。

 綾奈の普段しない行動は気になったが、あまり人には聞かれたくない相談みたいだから俺はそれ以上気にしないようにした。

「マコちゃん。悪いけど……ちょっと一人にしてしまうけど、俺の部屋で待っててよ」

「わ、わかりました。それでは真人先輩、失礼しますね」

 マコちゃんは笑顔で会釈をして先に階段を上っていった。多分さっきの「失礼します」は、この場を離れるのと、俺の部屋に入るのと二つの意味が込められているのだろう。

 マコちゃんが階段を上り始めたのを確認して、俺は人数分の飲み物を用意するため、そして洗い物の残りを片付ける為にリビングへと入った。

 それと同時に綾奈と美奈も脱衣所へと入っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る