第202話 茉子がやって来た
十二月三十日。
いよいよ年の瀬も迫ってきたその日のお昼時、俺と綾奈は特に面白くもない年末特番を見ながら昼食を食べ終え、今はその後片付けをしていた。俺が食器を洗い、綾奈がテーブルをアルコール除菌シートで拭いていた。
ピンポーン!
インターホンが鳴った。どうやら誰か来たみたいだ。宅配便かな?
父さんも母さんも今は出かけていて、美奈は自室でくつろいでいる。そして俺は洗い物をしてるからすぐには出れない。となると……。
「ごめん綾奈。ちょっと出てくれる?」
「わかった」
ちょうどテーブルを拭き終わった綾奈が、シートをゴミ箱に入れ、パタパタとスリッパを鳴らしながら玄関に移動した。
さすがに綾奈だけに来客の対応をさせるのは申し訳なかったので、俺は一度食洗を中断し、濡れた手を拭いてから玄関に移動した。
すると、美少女二人が顔を合わせていた。
「いらっしゃいマコちゃん」
「こ、こんにちは真人先輩」
来客は美奈の親友、吉岡茉子ちゃんだった。今日はここで遊ぶ約束をしていたのか。
そして、やっぱり今日も可愛らしい服装をしているな。
「ま、真人。えっと……」
綾奈は俺の服の袖を軽く摘み、少し困惑した表情で俺とマコちゃんを交互に見ている。そういえば初対面だったな。
「ああ、ごめん。この子は吉岡茉子ちゃん。美奈の親友だよ」
「よ、吉岡茉子です。よろしくお願いします。西蓮寺先輩」
マコちゃんの方は、やはり綾奈を知っていたか。
綾奈は去年、中学で生徒会副会長をしていて、よく全校生徒の前に出てたからそりゃあ知ってるよな。美奈の奴も俺と綾奈のデートを初めて目撃した時も綾奈を知ってたもんな。
「西蓮寺綾奈です。よろしくねマコちゃん」
マコちゃんに自己紹介をした綾奈は、笑顔で右手を出したので、マコちゃんも驚きはしたものの、すぐに笑顔になり、その手を取り握手を交わす。
「ところで真人先輩。どうして西蓮寺先輩が如何にも部屋着っぽい服を着てここにいらっしゃるんですか?」
まぁ、当然の疑問だよな。マコちゃんも俺と綾奈が付き合っているのを知ってるとはいえ、まさか部屋着姿の綾奈が出迎えてくるのは予想出来なかったようだ。……うん、誰にも出来んな。
「あや───」
「お義姉ちゃんは冬休みの間、うちに泊まりに来てるんだよ」
俺が説明しようとした瞬間、後ろから美奈がやってきて変わりに説明してくれた。てか、インターホン聞こえてるはずなんだからもっと早く降りてこいよ。
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