第198話 自分の脚も見てほしい綾奈
そんな約束を交わしてから数秒後、誰かが階段を上がり、そして隣の美奈の部屋のドアが閉まる音が聞こえた。どうやら綾奈がお風呂から上がったようだ。
もうすぐ綾奈がこの部屋にやってくる。そう考えると、顔が熱くなるのと、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
「お義姉ちゃんお風呂から出たみたいだし、私もお風呂入ろうかな。じゃあお兄ちゃん、お義姉ちゃんとのラブラブな時間を楽しんでね~」
「ちょっ、美奈……!」
美奈はニヤニヤした笑みを浮かべ、手を振って部屋をあとにした。
あいつ……わざとあんなことを言って俺をさらに意識させようとしたな。
美奈にそんな思惑があったのかはさておき、さっきの言葉で俺はもっと緊張した。
『お義姉ちゃん、その格好でお兄ちゃんの部屋に行くの?』
廊下から美奈の声が聞こえてきた。え? 「その格好」ってなんだよ!?
『へ、変かな?』
『変じゃないけど、……お兄ちゃんを誘惑しようとしてる?』
……は? 誘惑!?
『ふぇ!?そ、そんなつもりじゃ……』
『わかってるよ。今日の千佳さんのアレに対抗してだよね?』
アレ? アレってなんのことだ?
『う、うん』
『お兄ちゃん待ちくたびれてるから早く行ったほうがいいよ』
『わ、わかった』
『私は長風呂するつもりだし、お父さん達の部屋は少し離れてるから、多少声が出ても大丈夫だよ』
「ぶっ!!」
美奈の奴、なんてことを綾奈に言ってるんだよ!?
『み、美奈ちゃんのバカー!!』
美奈の発言に、綾奈も怒ったようだ。恐らく今、綾奈は顔を真っ赤にしているに違いない。
それから美奈は、本当にお風呂に入るためか、下におりていった。
それから少しして俺の部屋のドアがコンコンコンっと、三回ノックされた。
「ど、どうぞ」
ノックの音にビクッと身体が跳ねながら、少しどもって綾奈の入室を促した。
私は今、中筋家の湯船に浸かりながら考え事をしていた。
考えているのは、今日のお昼、ちぃちゃんがここに来ていたことについてだ。
今日、ちぃちゃんはダメージの入ったショートパンツを着用していて、そこからちぃちゃんの長く細い美脚が惜しげもなくあらわになっていた。
だからちぃちゃんがここに来た時から、真人の目は完全にちぃちゃんの脚に釘付けになっていた。
ちぃちゃんの脚は本当に綺麗で細い。同性の私でも見てしまうそれを、真人が食い入るように見てしまうのは仕方のないことだと理解出来る。
でも、頭ではわかっているけど、旦那様の視線を奪われてしまってモヤモヤしているのも確かだ。
ちぃちゃんのスタイルにはどうやっても勝てないけど、私のスタイルだって決して悪いわけではないんだから。む、胸だって真人と付き合いだしてからワンサイズアップしてDになった。
それに、今まで規則正しい生活をおくってきて、健康にも気を使ってスタイルを保ち続けてきた。真人と付き合いだしてからは、いつか私の全部を見てもらった時に、綺麗と言ってほしいから今まで以上にお肌のお手入れも気をつかってきた。
脚だって個人的には自信がある。
だから、今日はこの丈の長い長袖のTシャツと、下は部屋着の白いショートパンツを穿いて、真人の部屋に行く。
「これ、本当に下は穿いてないみたいに見える」
鏡で自分の姿を確認すると、思わず顔が熱くなった。
なかなかにえっちな格好で、これで今から真人の部屋に行こうとしてるんだから。
ゆ、誘惑したくてこの格好で行くわけじゃないから。あくまで私の脚を見てもらって、今日ちぃちゃんの脚を見たことへの上書きをしたいから……。
「で、でも……やっぱり触ってほしいって気持ちもなくは……」
そこまで呟いて、私はハッとなり頭をぶんぶんと振って考えを無理やり断ち切った。
そ、それに、お風呂から上がったのにいつまでもここにいたら私の後に入る人達にも迷惑がかかるため、私は髪を水滴が落ちてこない程度に拭き、二階の美奈ちゃんの部屋へと入った。
私が自分のキャリーケースから昨日使ったドライヤーを取り出して真人の部屋に行くために廊下に出ると、美奈ちゃんが真人の部屋から出てきた。
「お義姉ちゃん、その格好でお兄ちゃんの部屋に行くの?」
「へ、変かな?」
や、やっぱりこの格好で、旦那様とはいえ男の人の部屋に行くのはまずいのかな?
「変じゃないけど、…………お兄ちゃんを誘惑しようとしてる?」
「ふぇ!?そ、そんなつもりじゃ……」
なんて言ったけど、あわよくば真人に触ってほしいとは思っている。
「わかってるよ。今日の千佳さんのアレに対抗してだよね?」
「う、うん」
アレというのはやっぱりちぃちゃんの生脚のことを言っているんだろう。美奈ちゃんも、真人がちぃちゃんの脚を見ていたのはバッチリと目撃したらしい。
「お兄ちゃん待ちくたびれてるから早く行ったほうがいいよ」
美奈ちゃんの言葉に私の心臓はドキッと跳ねた。
え?真人が待ちくたびれてる!?
それって……やっぱり真人も私と早くイチャイチャしたいから?
「わ、わかった」
私は早く真人とイチャイチャしたかったので、美奈ちゃんを横切り、ドアノブに手をかけた。
「私は長風呂するつもりだし、お父さん達の部屋は少し離れてるから、多少声が出ても大丈夫だよ」
「っ!」
美奈ちゃんの一言で私の顔はさらに熱くなった。
「み、美奈ちゃんのバカー!!」
私は大声で叫び、美奈ちゃんの部屋を出た。
そ、そりゃあ、真人とキス以上のことをしたいと思ってるけど、近くに雄一さんと良子さんもいるのに、そういった行為をすることは出来ないから、ちゃんとセーブしないとね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます