第196話 千佳の見た目とのギャップ
リビングでスマホをいじりながらテレビを見ていたら母さんが帰ってきた。
「ただいま。あら?あんたここにいたの」
母さんは、俺がこの時間にリビングにいることが不思議みたいだ。
俺だってそうだ。今の時間なら部屋にこもっているから。
ただ、今日は千佳さんがいるから、三人の会話を聞いてしまわないようにこうしてリビングにいるわけだ。俺に聞かれたくない話をするかもしれないし、そこら辺はマナーかなと思った。
「うん。綾奈の親友が来てるからね」
「そう言えばそんなこと聞いたわね。健太郎君の彼女なんですってね?」
母さんももちろん健太郎のことは知っている。
「そうそう。綺麗な人でね、今美奈の部屋に行けば会え……ん?」
誰かが階段から下りてきている。誰だ?美奈かな。
「あ」
リビングに姿を現したのは千佳さんだった。
千佳さんは母さんを見ると、姿勢を正した。
「はじめまして真人のお母さん。真人の友人で綾奈の親友の宮原千佳です。お邪魔してます」
千佳さんは自己紹介をして深々と頭を下げた。すげぇ、百点満点だよ。
「…………」
母さんは口を開けてポカンとしている。多分千佳さんの見た目のギャルっぽさとさっきの真面目な挨拶のギャップと、美しい容姿と抜群のスタイルに驚いているのだろう。
「ほら、母さん」
未だにフリーズしている母さんを再起動させるべく、母さんの服の袖をクイクイっと引っぱって返事を促す。
「あ、あぁ……ごめんなさいね。真人の母の良子です。わざわざ挨拶しに降りてきてくれたのね」
「はい。やっぱりご挨拶しとかないとって思ったので」
「ありがとう千佳ちゃん。帰るまでゆっくりしていってね」
「ありがとうございます良子さん。それじゃあ、美奈ちゃんの部屋に戻りますね」
千佳さんはもう一度軽くお辞儀をして美奈の部屋へと戻っていった。
「それにしても、千佳ちゃんって想像以上にいい子ね」
千佳さんがいた方を見ながら、母さんが言った。
「だろ?俺も最初はびっくりしたよ」
見た目はめっちゃギャルなのに、目上の人への礼儀は誰よりも持っている千佳さん。そのギャップもまた、千佳さんの魅力の一つだ。
「健太郎君、よくあの子を射止めたわね」
「めっちゃラブラブな美男美女カップルだよ」
あの二人が一緒にいるだけで周囲の人の目を引いてしまう。なんというか、最近になって翔太さんと麻里姉ぇの松木夫妻に近いものを感じるようになった。
それから一時間くらいして、千佳さんは帰っていった。
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