第195話 リビングで束の間の2人きり

 俺が美奈の部屋のドアを閉めると、部屋から三人の笑い声が聞こえてきた。

 仲良きことは美しきかな、なんて言葉が頭をよぎった。

 さて、俺はリビングで残りの宿題を片付けようかな?まだお昼過ぎ、進捗次第では今日にも終わらせれるかもしれないからちょっと集中してやろう。

 俺は、一度自室に行き、宿題を持ってリビングに入った。

 食卓に宿題を置いて、一度冷蔵庫へ行き、お茶をグラスに注いで自分の席に着いた。

 俺は冬でも冷たい飲み物をよく飲む。別にそれでお腹を壊したりはしない。むしろ夏のほうが、がぶ飲みするのでお腹を壊しやすい。

 それからは集中して宿題に取り組んだ。

 途中、誰かが階段を下りる音が何回か聞こえた。多分あの三人の誰かがお花を摘みに下りてきたのだろう。

「真人」

 少し離れたところから俺を呼ぶ声がしたので、その方向に振り向くと、綾奈が立っていた。

 綾奈はゆっくりと近づいてきた。

「どうしたの綾奈」

「真人の様子が気になって……お邪魔だった?」

「まさか! 気にかけてくれて嬉しいよ。ありがとう綾奈」

 どんな状況においても、綾奈が邪魔になるなんて事は絶対にない。

「……えへへ♡」

 綾奈は照れたように笑いながら、俺に手を差し出してきた。

 俺も手を伸ばし、綾奈の内側三本の指をつかんだ。

「宿題の調子はどう?」

 綾奈はテーブルに広げられた教科書とノートを見て、俺の宿題の進捗を聞いてきた。

「いい感じだよ。このままいけば夕方には全部終わると思う」

 本当に集中出来ていたので、宿題の進み具合もかなり良かった。

「そっか。じゃあ、お邪魔しないように美奈ちゃんの部屋に戻ってるね」

 綾奈はほんの少しだけ惜しむように手を離した。

「綾奈は宿題はどれくらい終わった?」

「さっき全部終わらせました!」

 綾奈はそう言って俺にピースをした。その仕草がめっちゃ可愛い。

 てか、美奈と千佳さんの宿題を見ながら自分のを終わらせてしまうのが凄い。

「お疲れ様、綾奈。俺も今日中には終わるから、明日からは思う存分綾奈と過ごせるね」

 綾奈が宿題を終わらせたんだ。俺もとっとと終わらせて、綾奈との楽しい時間を過ごすんだ。

「ありがとう真人。私も楽しみ。……じゃあ、戻るね。宿題頑張って」

 綾奈は名残惜しそうに手を振り、美奈の部屋に戻っていった。

 正直に言えば、俺も綾奈ともう少し一緒にいたかったから少し寂しい。

 綾奈が美奈の部屋に戻ってから少しして、俺のスマホがメッセージを受信した。送り主は綾奈だった。

 何か言い忘れたことがあったのかな? と思いながらメッセージを見ると、そこには【お風呂から上がったら真人の部屋に行くね】と書かれていた。

 その文面に心臓が跳ねながら、俺は【了解。待ってるね】と返信して、そこから余計なことは考えず、宿題に集中したおかげで宿題が全て終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る