第193話 1番かっこいいのは……?

 真人をリビングに残し、私とちぃちゃん、そして美奈ちゃんは、二階にある美奈ちゃんの部屋に入った。

 私も真人のお手伝いをしようと思ったのだけど、ちぃちゃんに腕を掴まれていたのでお手伝いが出来なかった。

「ここが美奈ちゃんの部屋かぁ。片付いていて綺麗だね」

 ちぃちゃんが美奈ちゃんの部屋を見渡して感想を口にした。

「えへへ、ありがとう千佳さん。まぁ、片付けはお兄ちゃんに手伝ってもらったんだけどね」

 美奈ちゃん、本当にちぃちゃんに懐いているなぁ。

 親友と義理の妹の仲の良さを見て、私は嬉しくなった。

「それにしても、フィギュアが多いね」

 それは私も思った。真人はあのゲームセンターで取ってきたフィギュアがほとんどって言っていたけど、この数を見ると、美奈ちゃんはかなりあのゲームセンターに通ってることが想像出来る。もしかしたら店長の磯浦さんも美奈ちゃんを知っているのかもしれないな。

「うん。アーケードのゲーセンで取ったんだ」

「美奈ちゃん、クレーンゲーム得意なん?」

「まぁ、それなりには」

「なら、今度あたしの彼氏の健太郎と三人でゲーセンに行く?」

「行きたい!絶対楽しいだろうし、イメチェンした清水先輩も見てみたい」

 美奈ちゃん、清水君と面識があるんだ。清水君がここに遊びに来た時に知り合ったのかな?

「美奈ちゃん、健太郎のこと知ってるんだ」

「うん。お兄ちゃんが何度かここに連れて来てたから。でもイメチェンした姿を見たことないから気になってたんだ」

 美奈ちゃんがそう言うと、ちぃちゃんはショートパンツのポケットからスマホを取り出して操作した。

「健太郎は今、こんな感じだよ」

 ちぃちゃんはスマホの画面を見せた。そこにはラブラブなちぃちゃんと清水君のツーショットが表示されていた。

「えっ!? これが清水先輩!? 凄いイケメン……」

「でしょ?」

 ちぃちゃんはウインクをして言った。

「それに、優しいし気配りも出来るからね」

「お兄ちゃんの上位互換みたい」

 美奈ちゃんが自分のお兄ちゃんに失礼なことを言っている。それに、その一言は私にはスルーするのは無理だった。

「真人のほうがかっこよくて優しいもん!」

 確かに清水君はかっこいいし優しいけど、真人の彼女として、そして妻として、ここは引くわけにはいかない。

「綾奈はそうだよね」

 そう思っていたのに、ちぃちゃんはあっさりと言った。ちょっと肩透かしをくらった感じになっちゃった。

「あたしにとったらやっぱり健太郎が一番だけど、真人も、そして山根も引けを取ってないからね」

「「……」」

 ちぃちゃんの予想外の言葉に、私と美奈ちゃんは驚いて声が出せないでいた。

「それより今は宿題だよ。わからないところがあるから教えてよ綾奈」

「いいよ」

 ちぃちゃんはカバンから勉強道具……を取り出すかと思ったけど、出したのは何故かポテチが入った袋だった。

「ちぃちゃん、宿題するんじゃないの?」

「するよ? あぁ、これ? ずっと宿題と格闘するより、こうやってお菓子をつまみならの方が集中力が持続するかと思ってね」

 うーん、どうなんだろう?

 私は試したことがないからわからないけど、もしかしたらちぃちゃんの言う通りかもしれないから、私は何も言わないことにした。

 コンコンコン!

 ちぃちゃんがポテチの袋を背中から開けたのと同時に、部屋のドアをノックする音が聞こえた。真人だ~。

「どうぞ〜」

「お邪魔するよ」

 美奈ちゃんが言うと、真人がマグカップが三つ乗ったトレイを持って入ってきた。私たちのも用意してくれたことに嬉しくなる。

「はい、綾奈と美奈はココアで、千佳さんはこっちのコーヒーね」

「「「ありがとう真人(お兄ちゃん)」」」

 私たちはそれぞれ真人にお礼を言った。

 あ、真人がまたちぃちゃんの脚をチラッと見た。

 真人、脚が好きなのかな?でも、私も今日はショートパンツを履いてるから、見るならちぃちゃんのじゃなくて、私の脚を見てほしいよ。それとも、タイツを履いているのがダメだったのかな? 真人、生脚が好きなんだ……。

 それから真人はにこっと笑って部屋から出ていった。その笑顔に私はドキッとして顔が熱くなり、俯いてしまった。

 それと、テーブルから離れる時、真人はちぃちゃんが持っていたポテチの袋を見ていた気がする。

「それより綾奈」

 真人が部屋から出て行くと、ちぃちゃんが私を呼んだ。

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