第176話 荷物の最終確認をする綾奈

 真人との通話を終えて、私は立ち上がり背伸びをした。

「ん~~~~~~っ」

 時計を見ると、時刻は十一時半を過ぎていた。

「二時間以上もお話していたんだ」

 真人とお喋りをしているとあっという間に時間が過ぎてしまう。

 既にお風呂にも入っているし、化粧水や乳液等のスキンケアもバッチリだから、後は寝るだけなんだけど……。

「明日が楽しみすぎて、寝られないよぉ」

 真人と他愛のないお喋りをしていたら、欠伸が増えてきて、それで察してくれた真人が通話を終わらせてくれたんだけど、いざ明日の事を考えたらテンションが上がって目が冴えてきちゃった。

 また真人に電話をかけても、真人はきっと嫌な顔をしないで私とのお喋りに付き合ってくれると思うけど、やっぱりわがままがすぎると思うし申し訳ない。

 それに、今わがままばっかり言ってしまうと、明日から真人に甘えるのも遠慮してしまいそうになるから我慢しないと。

 そういえば、今日お父さんが夕食の時に言ってくれた言葉……。

 真人が私と付き合うにあたり、風見高校の文化祭の時にお父さんと交わした約束。

 まさかお父さんが、その約束を緩めてくれるなんて……。

 それを一緒に聞いていたお母さんも驚いていたな。

 お父さんが言った言葉を思い出し、顔が熱くなるのを感じた。

「た、確かに私たちは結婚の約束をしたけど、でもそんなこと……あぅ」

 付き合って二ヶ月以上経過したけど、私たちはキスまでしかしていない。

 キスより先を望んでいないといえば嘘になるけど、けど……そんなの私の口から言えない。言ったら真人にすごくはしたない女の子って思われちゃう。

 確かに恋人としてのスキンシップも私からする方が多いけど、えっちな子だと思われてないよね?

 この冬休み中も、真人といっぱい思い出を作りたいし、イチャイチャもしたい。もっと言えば、一日一回はキスしたい。

 結婚の約束をした、ものすごく好き同士のカップルなら、そう思って当然だよね?

 ちぃちゃんや茜さんはどうなんだろう。茜さん達はずっとラブラブだって真人から聞いていたし、ちぃちゃんは付き合って一週間で清水君とキスしたから、きっと二人も私と同じくらいのことは思ってるよね?

 うん、きっとそう。二人も私と同じと思うようにしておこう。

 それから私はトイレに行ったあと、寝る前に明日から持っていくキャリーケースの中身を確認した。

 着替えよし。着替えはなるべく可愛い服を五種類くらい用意した。あまり種類を持って行かなくて数日おきに同じ服を着たら真人が気にするかもだし、可愛い服を選んだもの真人に可愛いって言ってほしいから。

 下着よし。これも五種類用意した。その中には、昨日のクリスマスイブのデートで着用した上下赤の勝負下着も入っている。いざという時に備えて。

 シャンプー、コンディショナー、ボディソープよし。多分中筋家の皆さんは、家にあるのを遠慮なく使ってって言いそうだけど、二週間近く滞在することになるから、けっこうな消費量になると思う。それも少し申し訳なく思ったから、旅行用のミニボトルに入った物をドラッグストアで購入した。それを使い切ったら真人の家のを使わせてもらおうかな?

 向こうでやる冬休みの宿題よし。出来たら明日までに全部終わらせておきたかったけど、量が多いし、それに日中はそれを断念。出来るだけここで片付けて、残りを真人の家でするつもり。

 それから……一応、も持って行こうかな。多分使うことはないと思うけど、ね、念のために。

 あと、諸々の必要な物は明日真人が来る前に入れたらいいから、とりあえずはこれでいいかな。

 時計を見ると、日付が変わっていた。

 いよいよ今日なんだ。

 私はキャリーケースを閉じて、ベッドに入った。

 電気を消して、眠りにつこうとしたけど、今日からの事を考えてしまい、寝付くのにかなりの時間がかかった。

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