第174話 ドゥー・ボヌールのクリスマスケーキ
さあ、お待ちかねのドゥー・ボヌールのクリスマスケーキだ。
リビングに降りると、クリスマスケーキが入った箱がリビングに置かれていた。
「母さん、これ開けていい?」
「いいわよ」
「美奈、お皿とフォークを用意してくれ」
「わかった」
美奈がお皿とフォークを用意さしている間に、俺は箱から、崩れないように慎重にケーキを取り出す。
「すご!」
クリスマスケーキを見た俺は声を漏らした。
五号くらいの大きさのケーキに、サンタクロースの砂糖菓子、板チョコには「Merry Christmas」と、オシャレな字で書かれていて、いちごがふんだんに乗せられている。目でも楽しめるそのケーキだ。
「すごい可愛い!」
お皿とフォークを取ってきた美奈もそんな感想を漏らし、ポケットからスマホを取り出し、ケーキを写真におさめていた。
確かにこれは写真を撮りたくなるな。
俺も美奈と同じく、クリスマスケーキを写真におさめた。
写真を撮り終えたのを見計らって、母さんが包丁でケーキを八等分に切り分け、それを慎重にお皿に乗せていく。
断面を見ると、スポンジの間に生クリームと細かく切られたいちごがあった。これ、絶対に美味しいやつやん。
俺は席につき、フォークを構える。
「いただきます」
そう言って、ケーキにフォークを入れ、それを口に運んだ。
「っ!」
舌触りがとても柔らかく、濃厚で甘い生クリーム。スポンジもふわふわでとても美味しい。いちごも、これはそんじょそこらの市販のやつではない。どこか有名な農家さんから直接取り寄せているのではないかと思うくらい甘い。とにかくこれは───
「おいしいぃぃぃ!」
美奈が感想を代弁してくれた。てか、それ以外の言葉が見つからない。
「こんな美味しいケーキ食べたことない!」
美奈はぱくぱくと早いペースでケーキを食べている。
「美奈はドゥー・ボヌールに行ったことないのか?」
「うん。行きたいと思ってるんだけどね」
これほどの美味しいケーキが食べられる女性にとって夢のような場所だから、美奈も行きたいと思っているみたいだ。
ただ、美奈の様子からして、一度食べだすと止まらない危険もある。そうなれば体重が大きく関わってくるし、お財布事情も同じくだ。
しかし、今日はクリスマス。もう幾つ寝るとお正月がやってくる。
「なら、年が明けたら一緒に行くか?」
いくらお財布事情が厳しくても、年が明ければ両親や近くに住む親戚の人たちからお年玉を貰うことが出来る。財布の中身が潤えば、ケーキもいっぱい食べることが出来る。
「えっ!?お兄ちゃんの奢り!?」
……どうやら美奈は違う方向で解釈してしまったようだ。俺は苦笑いをしてしまった。
まぁでも、かわいい妹の笑顔が見たいし、お年玉もそこまで使い道が決まっているわけではないので奢ることも出来るだろう。
「いいけど、あまり食べすぎるなよ」
「わかってるよ。ありがとうお兄ちゃん」
「せっかくだし、時間が合えば綾奈と三人で行くか」
「うん! どうしよう。すっごく楽しみ」
美奈と新年の約束をしつつ、俺たちはクリスマスケーキを平らげた。
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