【2年生編6月5日スタート】中学時代、学校一の美少女に恋した俺。別々の高校に進学した好きな人本人から、ボディーガードとして一緒に下校してほしいとお願いされた

第162話 真人の選んだプレゼントは……

｢前に、さ。北内さんに告白されたって、言ったじゃん？｣

｢う、うん｣

｢急に他の女の人の話をしてごめん。……それで、ちゃんと断った事を伝えた後、綾奈は公園で｢不安だった｣って、言ってたよね？｣

｢うん。真人、君は、ちゃんと北内さんからの告白を断ってくれると信じてたけど、心の奥ではやっぱり不安だった｣

｢……やっぱり言わない方が良かった？｣

｢そんなことない。真人君は真っ直ぐな人だから……言わないでずっと一人で抱えてたら、真人君はモヤモヤしてストレスになってただろうし、それにちゃんと私に報告をしたのは、私に安心してほしかったからっていう真人君の優しさだとわかってるから。だから真人君の判断は間違ってないし、嬉しかったよ｣

｢……うん｣

｢……｣

｢……｣

｢…………でもね｣

｢うん？｣

｢正直に話すとね。それからしばらくは、ずっと不安だった｣

｢……え？｣

｢この先も、真人君のかっこよさや性格を知った女の人が真人君に好意を持って、いつかまた告白されるんじゃないかって｣

｢それは……考えすぎじゃないかな？｣

｢ううん。真人君はかっこよくて、誰よりも優しくて、真っ直ぐで誠実な人。それは私が一番理解しているよ｣

｢うん……ありがとう｣

｢でも、だからこそ不安だったの｣

｢……どうして？｣

｢真人君がこれからも他の女の人に告白され続けたら、その人達の誰かに取られちゃって、私の元から離れていっちゃうんじゃないかって───｣

｢そんな訳ないだろっ！｣

｢うん。……真人君なら、そう言うって思ってた｣

｢そんなの、当たり前じゃん｣

｢だから、これは私の心が弱かったの｣

｢そんなこと……｣

｢ううん。心では｢真人君を信じてる。彼は絶対に私の傍から離れたりしない｣って思ってたのに、いざ真人君が誰かに告白されたって聞くと、途端にそんな事を思っちゃうんだよ｣

｢綾奈……｣

｢お姉ちゃんにも、｢綾奈だけは真人君を最後まで信じなさい｣って言われて、心の中では信じてるつもりだったけど、その実真人君を全然信じきれてなかった。本当にごめんなさい｣

｢……謝る事じゃないって｣

｢これは、私の弱さだから｣

｢今は、不安じゃないの？｣

｢うん。茜さんがね、不安だった私の心を晴らしてくれたの｣

｢茜が？｣

｢うん。プレゼント選びでショッピングモールに行った時、まだ不安だった私の相談に茜さんが乗ってくれたの｣

｢そうだったんだ。その時の茜はなんて？｣

｢真人君は絶対に私を裏切ったりしないって｣

｢……そっか｣

｢真人君の幼なじみで、私たちの誰よりも真人君との付き合いの長い茜さんの言葉は、やっぱり力があったよ。それで私、気がついたの。真人君が誰かに告白されて、真人君が取られてしまうというのは、言い換えたら真人君が私と別れて別の人と付き合うという意志を示すということだって。茜さんの言葉で気付かされた｣

｢……｣

｢真人君は言葉で、そして行動で私が好きってこんなにも伝えてくれたのに、私の中でいつの間にかそれが当たり前になっていって、そんな大事な事を忘れていたの｣

｢俺はこれからも綾奈の傍から離れるつもりはないし、言葉でも行動でも、綾奈が、綾奈だけが好きって伝え続けるよ｣

｢私も。もう何があっても決して真人君を疑わない。真人君はこれからもずっと、私だけを見てくれて、私だけを好きでい続けてくれるって信じ続けるよ｣

｢……茜に感謝しないとな｣

　観覧車は少しずつ頂上に近づいている。

　俺は立ち上がり、ボディーバッグのファスナーを開け、その中からこの日の為に買ったクリスマスプレゼントを取り出した。

｢綾奈｣

｢え!?｣

　綾奈は俺がバッグから取り出した小さな箱を見て、目を見開きすごく驚いていた。

｢これが、俺からのクリスマスプレゼントだよ｣

　そう言って、俺は箱を開けた。

｢───っ!!｣

　その中を見て、綾奈は今までにないくらい息を飲み、目を大きく開き、両手で口をおさえていた。

　中に入っていたのは、指輪だ。