第157話 上映前、あざとかわいい綾奈
映画館に到着した俺たちは、まず発券機に向かう。
事前に綾奈がチケットを予約してくれていたので席は確保出来ていた。
ただ、どの辺の席なのかは聞いていない。まぁ、見れればどこでもいいかと思っていた。
「え!?」
だが、座席表を見て俺は驚きの声をあげた。
「綾奈、これって……」
「うん。カップルシートを予約しちゃった」
そう。俺が驚いたのは、二人分の席がひとつになっている、所謂カップルシートだったからだ。
綾奈と初の映画館デートでカップルシート……。
緊張して映画に集中出来るか不安になってきた。
チケットを発券した後は、飲み物とポップコーンを購入。
俺はコーヒーで、綾奈はカフェラテ。ポップコーンは別々に頼むと食べきれないかもと思ったので、二人で大きいサイズのポップコーンを一つ注文した。残すと申し訳ないからね。
俺達は係の人にチケットを渡し、返された半券を手に上映部屋に入る。
すると、結構な人が既に座席に着いていて、カップルシートもほとんどが埋まっていた。
すげぇ……普通の座席に座っている人たちもほとんどが男女のペアで、カップルかそれに近しい人達しかいなかった。
さすがクリスマスイブ。
あぁ、皆さんけっこうイチャついてますね。
具体的には手を繋いだり、女性が男性の肩に頭を乗せていたり、ポップコーンを食べさせあったり等の軽いスキンシップをしていた。
俺はそれを見て、一哉と茜みたいなのがいっぱいいると思ってしまった。
あの二人のイチャつきはけっこう目にしてきたけど、健太郎と千佳さんってどんな感じなんだろうな?
流石にここでキスをするカップルはいないみたいだ。……今のところは。
隣にいる綾奈を見ると、カップル達のイチャつきを見て、顔を赤くしていた。
「とりあえず席に行こうよ」
「うん。行こう」
俺達は自分たちの座席に移動した。移動したといっても出入口から一番近いカップルシートなので、目の前だ。
二人分の椅子がひとつになった席で、中央には買ったドリンクやポップコーンを置くテーブルが置かれていた。
俺はそのテーブルにドリンクとポップコーンが乗せられたトレイを置き、腰掛ける。
綾奈は着ていたコートを脱ぎ、座席に座ると、そのコートを膝に置いた。
俺はその様子をじっと見ていた。
やっぱ、何をやっても画になるよな。
首まで覆われた白のセーターも本当に似合う。
俺が見ていることに綾奈が気づいた。
「そ、そんなに見られると、恥ずかしいよぉ」
綾奈は俺を見て顔を赤くして照れている。
「……じゃあスクリーンを見てるね」
そう言って俺は照れ隠しで正面のスクリーンを見る。
スクリーンではこの映画館の系列のポイントがお得に貯めれる広告が映し出されていた。
普段、映画館には足を運ばないけど、とりあえず見るだけ見よう。
「ぁ…………」
隣からか細い声が聞こえたので、また綾奈の方を見ると、綾奈はしょんぼりしていた。
俺が綾奈の方を向いたまま、口角を上げて笑うと。
「……えへへ」
頬を赤らめて、そして目を細めて笑った。
「っ!」
もうね、本当に凄く可愛い。この笑顔を見ると俺の全ての語彙力は浄化してしまうのではないかと思う。
俺が自分のコートを脱いで後ろの背もたれにかけようとしたら綾奈が。
「そのコート貸して」
と言ってきた。
一体何をするのかわからなかったけど、俺は脱いだコートを綾奈に手渡した。
すると、綾奈は膝にかけていた自分のコートを背もたれに置いて、代わりに俺のコートを膝にかけた。
そして、綾奈は自分の膝を折り曲げ、体育座りをして、膝に自分の頬を乗せた。綾奈はその体勢のまま、俺をじっと見つめて、頬を朱に染め微笑んだ。
「っ!」
そのあまりにあざとかわいい仕草に俺の心臓はドキリと跳ねた。
今日は色々と綾奈に反則をくらう日だ。これがあと何回続くのやら。
俺は未だにその体勢で俺を見てくる綾奈の頭を優しく撫でた。
「えへへ~」
綾奈はふにゃっとした笑みを見せ、されるがままに撫でられていた。
その後、俺達は肩がくっつく程身を寄せあい、ポップコーンを食べさせ合いながら上映開始を待った。
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