第152話 デート前、旧友との再会

  綾奈と一緒に寝た日の翌週。今日は十二月二十四日。

 クリスマスイブであり、高校の終業式の日でもある。

 午前中に学校が終わった俺は、早々に帰宅して午後からの綾奈とのデートに向けての準備に取り掛かった。

 明後日から綾奈は冬休みの間、俺の家に泊まりに来る。

 それも本当に楽しみだけど、まずはこの後のデートだ。

 早めに昼食を取り、歯を磨き、洗顔もして自室に入る。

 俺は普段より気合いの入った服装を選ぶ。

 上は白のロングTシャツに黒のジャケットに紺色の厚手のコート。下はいつもより少しお高めのデニムのパンツ。

 髪にワックスをつけて、ショートな髪型をいい感じに逆立たせて整える。

 そしてこの度の入っていない薄い黒縁のオシャレメガネを付け、腕時計も装着したら、クリスマスデートコーデの完成だ。

 ボディーバッグに財布と綾奈に渡すクリスマスプレゼント、その他諸々を入れ、忘れ物がないか入念にチェックをして家を出た。


 時刻は十二時半。

 待ち合わせは一時なので三十分前に到着した。

 綾奈はまだ来ていない。女の子の準備は時間がかかるから遅れても全然オーケーだ。

 そんな事より、綾奈がどんな服装で来るのかが楽しみだ。

「あれ?お前、真人か?」

 ふと、背後から俺の名前が聞こえたので、俺は後ろを振り向いた。

 するとそこには、中学までの同級生で、風見高校や高崎高校とは別の学校に進学した三人組の男子がいた。

「あれ?お前達は……」

「やっぱり真人か!」

「久しぶりだな。てか痩せすぎて一瞬誰だかわからなかったぞ!」

 最初に俺の名を呼んだのは政枝まさえだ光輝こうき。中学時代は野球部所属で今も坊主頭。身長は俺と同じくらいでフツメン。ポジションは確かセカンドだったかな?

 二番目に声を発したのが、同じく野球部所属の本郷ほんごう啓太けいた。坊主頭で身長は俺より少しだけ低い。強肩と言われていて、ポジションはセンターだったかな?顔は割とイケメンだ。

 最後はこれまた野球部所属の沢津さわづいつき。やっぱり坊主頭で、ふくよかな体格なのでキャッチャーをしている。身長は俺より高い。

 この三人は中学三年の時のクラスメイトだった野球部トリオだ。

「三人とも久しぶりだな。そっちも今日から冬休みか?」

「まあな。今日部活がないから三人でショッピングモールにグローブとかシューズを見に行こうとしてるとこだよ」

 やっぱりこの三人は高校に行っても野球を続けているんだな。

「真人は……随分と気合いが入った格好をしてるな」

「も、もしかして……お前、これからデートか!?」

「まぁ、そうだよ」

 特に嘘をつく必要もないので、これからデートだと正直に告げる。

「くっそぉぉぉぉ!お前も彼女持ちなのかよ!?」

「痩せた途端に彼女作りやがって!」

「俺たちは未だに彼女出来たことないのによ!ずるいぞ!!」

「いや知らんがな」

 野球部トリオが一斉にひがんでくるけどそれは俺の知るところではない。

「啓太は彼女出来そうなのに、いないのか?」

 啓太は健太郎程ではないにしろイケメンの部類に入るから、本気を出せば彼女が出来そうなのに。

「いやー、こいつは女子を前にすると緊張してしまって上手く喋れないんだよ」

 樹が言った。

 あーなんかそんな場面を中学の時も見た気がする。

 野球一筋で女子に免疫が無さすぎて上手く喋ることが出来ないのか。それさえ克服したら普通に彼女出来るだろうな。

「俺のことはいいんだよ!それより俺は真人の彼女がどんな人なのか気になる!」

 やはりそこは気になるよな。

 というか、俺の彼女が実は中学の時、学校一の美少女と呼ばれていた綾奈だと知ったら、この三人はどんなリアクションをするのだろう。

 この野球部トリオ、さっき言っていた啓太以外の二人も女子にあまり免疫がない。

 でも当時の俺同様、チラチラと綾奈を、そして千佳さんのことも見ていたのは俺も知っている。

 この後綾奈も来るし、このままいけば嫌でもご対面になる。どうせ内心では俺の彼女を一目見たいと思っていることだろうから、俺は綾奈が来るまでこの三人と話すことに決めた。

「そんなに俺の彼女が気になるのか?」

「当たり前だろ!去年まで樹と体型変わらなかった奴が作った初カノ。気にならない方がおかしいだろ!?」

 三人ともテンション高いな。

「高校に入って知り合った子なのか!?」

「見た目はどうなんだ?やっぱり可愛いのか!?」

「もうキスはしたのか!?それともその先も……!?」

 野球部トリオが有名芸能人のスキャンダルを突撃取材する記者みたいに矢継ぎ早に質問してくる。

 気持ちはわからんでもないけど、ここまでグイグイ来られるとな……。

「ちゃんと話し出したのは今年の二学期に入ってからだよ。可愛いか可愛くないかと言われれば、とびきりの美少女だよ。キスより先は……ノーコメントだ」

 キスより先……先日の添い寝はそこに当てはまるのかわからなかったから濁したが、それ以外は正直に話した。

「まだ出会って四ヶ月か!?」

「とびきりの美少女……」

「もう童貞卒業しやがってこのやろー!」

 三者三様の感想を言っているが……卒業はしていない。訂正するのも面倒なのでスルーしておく。

「まぁ、その子は三人も知っている人だよ」

「「「え?」」」

「俺の彼女は、さい───」

 綾奈の名前を告げようと思った瞬間、俺の背中に結構な衝撃が走ったので思わず前につんのめった。

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