第150話 抱き枕と腕枕
「!」
横になり俺を見ていた綾奈の身体がビクッと跳ねる。
そして俺はベッドに乗り、綾奈のすぐ傍で同じく横になった。
「へっ、あ、あの、こ、これって……!?」
綾奈が耳まで真っ赤になって凄くテンパっている。めっちゃ可愛い。
「綾奈。ちょっと頭の位置を下げて枕から頭を離して」
「え?う、うん」
綾奈は言われるがまま、身体を下へとずらした。
綾奈の視線はちょうど俺の胸の所にある。
「ちょっと頭上げて」
「わ、わかった」
綾奈が頭を上げてくれたので、俺は綾奈の頭の下に自分の腕を持っていく。
「ま、ま、真人君。……これってもしかして……!?」
どうやら綾奈は察したようだ。
「うん。そのまま頭を下ろして」
俺がそう言うと、綾奈はゆっくりと頭を下ろした。
そう、腕枕だ。
「~~~~~~っ!」
綾奈は声にならない声をあげている。どうやら相当照れているようだ。顔もすごく赤い。
そして俺は、腕枕していない方の手を、綾奈の腰に回した。
「っ!」
綾奈の身体がまたもや跳ねた。
「真人君」
「ん?」
「こ、これが、真人君のしたかった事?」
「うん。綾奈抱き枕。一度やってみたかったんだ」
俺が綾奈にお願いしたかったのは、抱き枕になって欲しかったという事。
その抱き心地の良さは普段から実証済みだから、もし抱き枕として横になって抱いても、抜群の抱き心地なのではないかと思ったのだが、これは想像以上だ。
綾奈からいい匂いもするから本当に最高だ。
綾奈を見ると、まだ照れているようだ。
「……嫌だった?」
「う、ううん。真人君に包み込まれてて凄く心地いいし、こ、これは、私のしてみたかった事も一緒に叶っているというか……」
デクレッシェンドがかかって、だんだんと声が小さくなり、もにょもにょと喋る綾奈。
「綾奈のお願いって、やっぱり腕枕?」
「な、なんでわかるの!?」
実は綾奈から「私のお願いも外では出来ない事」と聞かされていた時から何となく予想はしていた。
「綾奈が外で出来ないお願いって聞いた時にピンと来たんだよ。合唱コンクールの打ち上げで綾奈が大人になった俺の腕枕を妄想してたからもしかしたらと思ってね」
「あれ、まだ覚えてたの!? うぅ……恥ずかしいよぉ」
顔を赤くして照れる仕草の綾奈を間近で見れて俺の心臓は凄くドキドキしていた。可愛いがすぎる。
「それで、実際に腕枕を体験してみてどうかな?」
「へっ!?あ、あの、それは…………さ、最高、です」
「良かった」
綾奈から最高金賞の称号を賜りました。
「真人君はどう?」
「ん?」
「綾奈抱き枕の抱き心地は」
「言わなきゃダメ?」
「ダ~メ」
その言い方、そして照れながらの笑顔。反則的に可愛い。
「最高」
むしろそれ以外ないだろ。
「えへへ。良かった~」
笑顔の綾奈の頭を優しく撫でると、綾奈はさらに照れたような表情になった。
少しして、綾奈が俺の顔を見てきた。
「ねえ、真人君」
「何?綾奈」
「もっと、くっついていい?」
「もちろん」
「うん♡」
俺は綾奈の腰に回している手に力を込めて、綾奈を抱き寄せた。
横になりながら、俺たちは完全に密着していた。
超至近距離でお互いの視線が絡み合う。
その綾奈は瞳を潤わせながら上目遣いで俺を見ていて、何かをねだっているようだ。
あ、これは……。
綾奈の意図が読めた俺は、綾奈の腰に回していた手を綾奈の頬に置いた。
すると、綾奈は目を細め、頬に置いた俺の手の上に、更に自分の手を置いた。
「綾奈」
「真人君」
お互いの名前を呼び合い、俺たちはゆっくりと唇を重ね合った。
「幸せ♡」
「俺も」
大好きな人を抱き枕にして、大好きな人も俺の腕枕に照れながらも喜んでいて、そしてキスをする。幸せでない要素なんてどこにもない。
「ちょっと寝ていい?」
夜遅くまで今日のご褒美の内容を考えていたから、やっぱり眠気が襲ってきたみたいだ。
綾奈のいい匂いもすごく落ち着く……。
「いいよ。私も真人君の腕枕で寝さてもらうね」
「ああ。存分にご堪能ください」
「えへへ。はい♡」
そうして俺たちは笑い合い、もう一度キスをして、二時間ほど眠りについた。
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