第112話 綾奈、叫ぶ

 真人君とのビデオ通話を終えた私は、勉強机から離れてベッドに行き、そのままベッドに倒れ込んだ。

 そして枕に顔を埋めて叫んだ。


「真人君かわいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


 何なのさっきの真人君!?

 凄く、すごーーくかわいかった。

 普段は声もかっこいいのに、さっきの真人君の声はかわいさも混じっていて、凄く丸みを帯びているような感じだった。

 それに一言目が「愛してる」はずるい!

 あんなの……あんなのっ!……はう~。

 私は足をバタバタとさせ悶える。

 それに、ビデオ通話した時に映った真人君の顔、とろんってしてて、その表情を見ただけでキュンキュンした。

 その後に見せてくれた優しい微笑み……ドキドキしすぎて心臓が持たないよぉ……。

 それから甘えるように私の名前を呼んでくれて……えへへ~。思い出しただけで顔がにやけちゃう。

 「そ、そうだ。明日真人君が来るけど、流石に外でって訳にはいかないよね」

 いつも帰る時間は人通りが少ない閑静な所だけど、それでも朝は通学や通勤で人がいっぱいいるから。

「お母さんに言っておこうかな」

 お父さんは朝早くに家を出るから多分真人君が来る頃にはいないと思う。

 だからお母さんには明日のことを伝えないと。

 そう思って私はリビングに降りると、お母さんがテレビを見ていた。

「お母さん」

「ん?どうしたの綾奈?」

 お母さんはドラマを見ていたけど、私が声をかけるとこっちを向いた。

「って、顔赤いけど大丈夫?」

「へっ!?あ、だ、大丈夫」

 さっきの真人君のかわいさと明日のことを考えてのドキドキで顔が赤くなっていたのをお母さんに指摘された。

「それで?何か用事かしら?」

「う、うん」

 私は一呼吸おいて切り出した。

「えっと……明日ね、真人君が家に来てくれるんだけど、ち、ちょっとだけ家に上げても大丈夫かな?」

「真人君が?……あぁ、なるほどね。ふふっ」

 お母さんは少し訝しんだと思ったら、急に温かい目で私を見たと思ったら微笑んだ。多分、私の顔が赤くなっていた理由を察したみたい。

「うん。真人君が明日家まで迎えに来たいって言ってくれて、それで、ちょっと私の部屋に上げたいな~って……ダ、ダメ?」

「…………」

 お母さんは腕を組んで考えている。

 真人君が来るのを否定されたらどうしよう。真人君に「やっぱりダメになった」なんて言いたくないし……。

 私は祈るようにお母さんからの返事を待つ。

「いいわよ」

「いいの!?」

 お母さんの了承を貰えた私は驚いた。

 朝早くから私の部屋で二人っきりにしたら色々変な想像をされそうではらはらしたけど、とにかくやった。

「えぇ。ただし、変な事はしちゃダメよ」

 当然ながらその条件を出された。

 ……どのくらいが「変な事」なんだろう。

 少しだけ聞きたかったけどやめておこう。長くなりそうだし。

「わ、わかってるよ。ありがとうお母さん。それじゃおやすみ」

「ふふっ、構わないわよ。おやすみ綾奈」

 笑っているお母さんに手を振って、私は自分の部屋に戻った。

 これで明日の朝の障害は無くなった。

 そう思いながら私は、自分の部屋を見回す。

 普段からきちんと掃除をしているので散らかっているところは見当たらない。

 でも、もし見落としてることろがあって、それを真人君に見られたらいけないと思って、私は自分の部屋を入念にチェックした。

 チェックし終えてベッドに潜り込んだけど、明日のことを考えるとドキドキしてしまって、寝付くのに時間がかかってしまった。

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