第111話 綾奈への想いが溢れた真人
『もしもし。こんばんは真人君』
電話をかけて少しして綾奈が応答してくれた。数時間前まで一緒にいて声も聞いていたのに、綾奈の声を聞いてまた気持ちが高揚する。
「愛してる」
自然とそんな言葉が口から出てしまった。
これ、相手が綾奈じゃなかったらただの気持ち悪い奴からの電話だぞ。もちろん綾奈以外に言う気は全く無いけど。
『ふぇ!?』
予想通り、驚きの声を上げる綾奈。
きっと今は顔を真っ赤にしてるんだろうな。
『ど、どうしたの真人君!?いきなり……』
「なんか、言いたくなって」
『あぅ……う、嬉しいけど、不意打ち、ずるい』
不意打ちをくらってカタコトになってる綾奈。可愛い。
「綾奈」
『なに?』
「可愛い」
また自然と口から出てしまった。自分でもおかしいと思う。おかしいと思うけど今はこの気持ちを抑えられない。
『っ!も、もう!また』
綾奈はまた照れているみたいだ。
「あはは、ごめん。さっき千佳さんと話してて、それで旅館で綾奈が俺のことでキレたって聞いて、綾奈の声が聞きたくて電話した」
『ちぃちゃんと?珍しいね。それに……あの時は本当にカッとなってしまって、お姉ちゃんが来てくれなかったら私、きっと阿島君に怒鳴ってた。私から真人君の存在を消そうとしてるんだって思って、我慢出来なかった』
言葉から綾奈の愛情が伝わってくる。
ヤバい。気持ちが抑えきれない。ブレーキが壊れている。
「ありがとう」
『い、いえっ!……その、彼氏を悪く言われたら怒るのは当然だし……』
「あやな」
『ど、どうしたの?』
「ビデオ通話したい」
『へ?』
「あやなの顔が見たい」
『い、いいよ』
「ありがとう」
俺はスマホを耳から離し、画面のビデオ通話のボタンをタップした。
すると画面が切り替わり、綾奈の部屋の天井が映った。どうやらスピーカーモードで話していたみたいだ。
画面が動き、綾奈の顔が映った。
画面に映った綾奈は、前髪を指で弄っている。お風呂上がりなのか、髪が少し濡れていて顔も上気している。
俺は画面に大好きな彼女が映った事で、自然と目を細め口角を上げて笑っていた。
『っ!……』
すると綾奈はびっくりした表情をして、顔の赤みがさらに増した。
「綾奈可愛い」
『~~~~~~~~』
綾奈は顔を手で隠して声にならない声を上げている。よく見ると耳まで真っ赤だ。
『はっ!』
綾奈は顔から手を離し、ぶんぶんと頭を振って画面越しの俺を見た。頬は赤いままだ。
『ど、どうしちゃったの真人君!?今、ちょっと変だよ!』
「うん。自分でも変っていう自覚はある。数時間前に会ってたのに、今は綾奈に会いたい」
『あぅ……そ、そんな……ダメだよ』
「ん?」
『そんな事言われたら……私も、会いたくなっちゃう』
「綾奈……」
『今の真人君、かわいすぎて、ギュッてして頭撫でたくなっちゃうよ』
「してほしい」
『うぅ……』
ここで部屋に掛けられている時計を見る。時刻は九時半。
今、これ以上わがままを言っても時間的に会うのは難しい。
俺は深呼吸をして気持ちを落ち着ける。
『真人君?』
「変な事言ってごめん。突然こんな事言って、迷惑かけたし困らせたよね?本当にごめん」
『う、ううん。確かにびっくりはしたけど、迷惑なんて思ってないよ。むしろ……嬉しかった』
「嬉しかった?」
『うん。真人君がこんなにも私に甘えてくるの、真人君が私を必要としてくれてるのが、凄く嬉しい』
「もう綾奈無しでは生きられないからね」
大袈裟な表現じゃなくてガチでそう思う。
もし綾奈が俺の前から姿を消してしまったら立ち直れない自信がある。
『そ、それは……私も、同じ……です』
「っ!」
綾奈の言葉に俺の頬は熱くなり、俺は右を向き、右手の甲で口を隠した。
『真人君、照れてる~』
そうだ。この癖は初めてゲーセンに行った時に、美奈によって綾奈にリークされたから、照れてるのがすぐバレるんだった。
『かわいい』
画面越しの綾奈は、本当に愛おしそうなものを見るような慈愛に満ちた表情をしていた。
「綾奈」
『な~に?真人君』
「明日さ、……朝、綾奈の家まで迎えに行ったらダメかな?」
『だ、ダメじゃないよ!』
「良かった」
『朝はちぃちゃんが迎えに来てくれるから、その、早めに来てくれると、嬉しいな』
「! ……わかった。じゃあ明日は早めに家に行くね」
『うん。待ってるね』
そうしておやすみを言い合って通話は終了した。
……改めてさっきの会話を思い返すと、俺、だいぶ恥ずかしい事言ってたよな?
千佳さんが話してくれた内容で愛しさが込み上げたとしても、あんな甘えるような事を言うなんて。これが深夜テンションというやつか? 現在夜の九時四十五分。……そこまで深夜じゃないけど。
綾奈もやっぱり困ってたよな?
はぁ……軽く死にたくなる。
まぁ、今さら過ぎたことを考えても仕方ない。
今日はもうアレコレ考えるのはやめてラノベでも読もう。
こうして俺は一時間程ラノベを読んだのだが、あまり内容が頭に入って来ず、寝ようと思ってベッドに潜っても、寝付くまでにかなりの時間を要した。めっちゃアレコレ考えてるやん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます