第107話 阿島再び
綾奈と書店デートをした翌週の木曜日、俺は一人で下校していた。
高崎高校の合唱部は全国大会翌週は丸々お休みだったのだが、その翌週である今週は普通に部活も再開されていて、一緒に帰れる日が週二日に戻っていた。
といっても毎朝一緒に登校しているし、昨日の水曜日は綾奈は部活がお休みだったので放課後デートもした。
高崎高校の合唱部は毎週水曜日と金曜日が部活が休み──大会が近くなると金曜日も部活になる──なので、明日はまた綾奈と一緒に下校も出来る。
そして土曜日には、以前みんなで考えていた綾奈と千佳さんの、合唱コンクール全国大会で金賞をとった祝勝会も開かれる。
その日程としては、お昼に綾奈のお姉さんの松木麻里奈先生の旦那さんである松木翔太さんが店長を務めるケーキ屋、ドゥー・ボヌールでケーキを堪能した後、アーケードに移動してゲーセンに行くという流れになった。
そんな週末の事を考え、楽しみに下校していると、後ろから一人の男子に声をかけられた。
「中筋真人君……だよね?」
「え?」
後ろを振り向くと、ブラウンヘアの優しそうな男子がいた。
彼の服を見ると、高崎高校の制服を着ていた。
俺は彼を見たことがある。
「君は確か……高崎の合唱部の」
「うん。
そうだ。以前高崎と合同練習をした時に見たイケメンの一人だ。その昼休み、綾奈に積極的に話しかけていた男子だったので、俺は少し警戒することにした。
でも、なんで今彼がここに?
「あれ?今、合唱部は部活中じゃないの?」
「俺は臨時部員だから、大会が近くなったら練習に参加するんだよ」
「俺と一緒なんだ」
そうか。彼も臨時部員だったんだ。
臨時部員であの歌唱力は素直にすごいと思う。
「でもよく他校の部活の予定を知ってるね」
「まぁ、二学期の始めに綾奈に聞いたから」
二学期の始業式後、俺は風見高校の校門前で待っていた千佳さんに連れられて、この近くのファミレスに行き、そこで綾奈から一緒に下校してほしいと頼まれた。
そこで綾奈と千佳さんから高崎の合唱部の予定を教えられたので知っていた。
「綾奈……」
阿島君はボソッと綾奈の名前を呟いた。
俺はこの時、阿島君がなぜ俺に接触してきたのか、その理由を何となく察した。
「今、ちょっと時間ある?」
「まぁ、あるけど」
「良かったら、ちょっと話さない?」
「良いよ」
「出来ればあまり人に聞かれたくないから、人があまり通らない所知ってる?」
「……こっちだよ」
そう言って、俺たちは移動を開始した。
阿島君の話したいことは綾奈の事だろう……そう確信した俺は、さらに警戒を強めた。
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