第97話 安心したことと気になること

 自分の教室に入り席に着くと、俺を見た一哉と健太郎が俺の席にやってきた。

「よっ、真人。もう体調はバッチリみたいだな」

「おはよう真人。治ったみたいで安心したよ」

「おはよう二人とも。心配かけて悪かったな」

 二人はすぐに俺の体調の回復を喜んでくれた。本当、こいつらいい奴らだよな。

「気にすんなって。まぁ、昨日はお前がいなくてなんだかんだで張り合いがなかったけどな」

「だね。やっぱり真人もいてくれないとね」

「二人とも……ありがとうな」

 こいつら、なんでホームルーム前に俺を泣かせようとしてるんだよ。素直に嬉しいけど涙腺が緩まないようにしないとな。

「やっほーカズくん、みんな。真人、元気になってよかったね!」

 少しして茜が俺たちの教室に入ってきて、いつもの挨拶をしながら俺の席にやって来た。

 茜は上級生だが、一哉に会いにしょっちゅう俺たちのクラスに顔を出している為、茜が教室にやってきてもみんな特に驚いたりはしない。

「おはよう茜。それから、ありがとな」

 俺は茜にも挨拶と、心配してくれた事へのお礼を言った。

 その直後に予鈴が鳴った。そんなに時間があるわけでもないのに、わざわざそれを言うために来てくれたのか。

 俺は心配してくれた年上の幼なじみに対して胸が熱くなるのを感じた。

「あ、もうそんな時間だったんだ。じゃあ真人、あの後綾奈ちゃんとどう過ごしたのか、お昼に聞かせてね!カズくん、健太郎君もまた後でね~」

 そう言うと、茜は一哉とハイタッチして教室を後にした。茜のハイタッチは子どもの頃からの癖みたいなもので、俺も小さい頃はよくやったな。

 しかし、恋人に触れられて羨ましいな。

 ……って、何考えてんだ俺は!? さっきまで綾奈と手を繋いでいたじゃないか!

「俺もそれは気になっていた。真人、昼にちゃんと教えてくれよ」

「……あはは、真人、病み上がりなんだからあまり無理はしないでね」

「あ、あぁ」

 綾奈のことを考えていたため、気の抜けた返事をしてしまったが、二人は特に気にした様子もなく、一哉と健太郎も自分の席に戻っていった。昼休みの質問攻めは逃げることが出来なさそうなので、ぼかせるところはぼかしながら話すとするか。

 こうしてホームルームが終わり授業になったのだが、特に問題なく受けることが出来た。

 ただ、体育だけは大事をとって見学することにした。昨日完治したとはいえ、病み上がりで持久走はさすがにキツイからな。

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