第90話 ゲームスタート
そんなこんなでゲームがスタートして、全員がサイコロを振り終え、最初のミニゲームが選択された。
最初のミニゲームは、ターザンの距離を競うミニゲームだ。
これは、スティックをタイミング良く左右に動かし勢いをつけ、そしてタイミングを見計らってボタンを押し、キャラクターを一番遠くまで飛ばせたプレイヤーが勝利となるミニゲーム。ちなみに画面は2Dだ。
CPU二人は強さが普通と言うこともあり、そこそこの飛距離を出した。
俺はというと、流石にこの強さのCPUに負けるわけはなく、あっさりとCPUの飛距離を上回った。
そして最後は綾奈の番。
俺の説明を聞いた綾奈はタイミング良くスティックを左右に動かしているのでいい感じに助走をつけている。後はキャラクターを飛ばすボタンをタイミング良く押すだけ。
そのタイミングを慎重に見計らっている綾奈の表情は真剣そのもので、俺が横から至近距離で見ているのに気づかない。
「えいっ!」
そして綾奈はボタンを勢いよく押した。すると───
本来飛ばす方向と逆に飛んでしまい、綾奈のキャラクターは一瞬にして画面から姿を消した。
「えぇ~!何で!?」
「……ぷっ!」
綾奈は予想外の結果に驚きの声を出し、俺は予想外の珍プレーに思わず吹き出してしまった。
「むぅ~……真人君ひどいよぉ」
俺が笑ったのに気づいた綾奈は頬を膨らませジト目を向けて睨んできた。
「あはは、ごめんごめん。まだ最初のゲームだから挽回出来るよ」
俺はそう優しく言い、綾奈の頭を撫でると、綾奈は笑顔を見せてくれた。チョロい。
その後は白熱した勝負……とまではいかなかったけど、綾奈は最初のような珍プレーは見せず善戦したが、やはり経験者の俺には及ばず差が縮まらないまま、ゲームは最後のミニゲームを残すのみとなった。
最後に選択されたミニゲームは、四方を壁に囲まれたフィールドを逃げ回る一人を残りの三人で外から大砲で狙い撃つ一対三のバトルだ。逃げるのは俺で狙うのは綾奈とCPU。
一分間逃げ切れば俺の勝ちで、一分以内に俺を撃てば綾奈達の勝ちだ。
この勝負に負けても俺の優勝に変わりはないが、ここも勝って堂々と綾奈の膝枕を堪能しよう。勝負は時に非情なものである。
「よっ、ほっ!」
開始から三十秒経過。少し危ない場面もあったけど問題なく躱せている。
「むぅ~」
中々当てられない綾奈はいつもの不満の声を漏らす。可愛いなぁ。
残り十秒。俺はほぼ勝ちを確信したところで動きがあった。
ゲームの戦況ではなく、綾奈の動きに。
ちゅっ!
綾奈が俺の頬にキスをしてきた。
「へっ!?」
突然の事でフリーズした俺と俺の操作しているキャラクター。
その隙をついて綾奈が俺のキャラクターに砲撃を当てて、俺のキャラクターは画面の外に飛ばされてしまった。
「ちょっ、綾奈!?」
「えへへ。勝った~」
綾奈に抗議をしようと思ったけど、顔を赤くしながら笑顔でピースをしてくる姿に毒気を抜かれてしまい、勝負の結果はどうでもよくなってきた。
ようは楽しむことが大事だもんな。
ゲームが終了し、順位発表に移る。一位は俺で二位の綾奈との差はけっこう開いていた。
綾奈は悔しがっているが、初めてにしてはいい結果を残したと思う。
「綾奈」
だから俺は、綾奈にご褒美をあげようと思った。
「なに?」
そう言って俺の方を向いた綾奈にキスをした。
「ふぇ!? な、何で……!?」
綾奈は顔を真っ赤にしてあたふたしている。負けたのに何でちゅうをしたの?と。
「綾奈が頑張ったご褒美……って言うのはずるいか。俺がしたかったから」
俺は自分の気持ちを正直に話した。
「ご褒美」と言う言葉を隠れ蓑にするのは卑怯だもんな。
「う、嬉しいけど……ずるいよぉ」
一体何がずるいのかはわからなかったけど、俺は綾奈に微笑み、コントローラーを床に置いて綾奈のお腹に手を添える感じで抱きしめた。綾奈のウエストは、制服越しでもわかるくらい細かった。
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