第49話 部活後の待ち人
「中筋が昨日告ったのって、合同練習の時にお前の手を引いて帰った西蓮寺さんって人なんだろ?」
部活終わり、一哉と他の男子部員数名と校門に向けて歩いていると、そのうちの一人が今日何度目かわからないほどされた質問をしてきた。
ただ違うのは、そいつは告白した相手が綾奈さんとわかっていたことだ。
「まぁ、そうだよ」
隠しても仕方ないので、俺は正直に話すことにした。
ここで隠しても、どうせ一哉が皆にバラしそうだから、どちらにしても隠すことに意味は無いと思った。
「やっぱりな。で、付き合えたのか?」
「まぁ……」
「かぁーー、羨ましい!」
「お前らはあの後のことは知らないだろうが、後夜祭では真人と西蓮寺さんはめっちゃイチャついてた」
一哉が補足を入れてきたんだけど、完全に余計なお世話だった。
「イチャついてなんか───」
「そこから先は言わせねーよ。お前ら俺たちの前で普通に抱き合ってただろ!?」
「ちょっ、おまっ!!」
「西蓮寺さんもお前にゾッコンだし~、良かったな真人」
言葉とは裏腹に、一哉の顔はいつものニヤニヤしたものだった。
こいつ、誰が見てもわかるくらいイジってきやがる。
「中筋、お前……」
「なんて羨ましい奴」
「爆発しろよ」
「馬に蹴られてしまえ」
一哉の言葉を皮切りに、次々と思ったことを口にしてくる部活仲間達。
「お前ら……」
もうつっこむ気力もないのでそれだけ言ってため息をついた。
「でもまぁ、お前が幸せそうで何よりだよ」
さっきのからかいの態度から一変、一哉が笑みを見せて俺の肩に手を置いてきた。
どうやら心からそう思ってくれているみたいだ。
普段からもっとそう言う態度を見せてくれ。
……いや、普段からこんなだと逆に気持ち悪いな。
そんなこんなで校門が近くなってきた。
「にしてもラブラブだよな真人達」
「まぁ、付き合ったの昨日だからな」
「校門を抜けたら西蓮寺さんいたりして」
「いやいや、そんな訳な───」
「あ、真人君」
いたわ。
俺が言い終わる直前に校門を抜けると、本当に綾奈さんがいました。しかも制服姿で。
俺に気づいた綾奈さんは、とてとてと俺の傍に来て手を握り指を絡めてきた。
なんか、飼い主を見つけて喜んで走ってくる犬みたいだな。いや、そんなことより。
「えっ?綾奈さん、どうして」
「高崎は文化祭の代休だから」
「それは知ってるけど、何でここに?」
「……真人君に会いたくて、来ちゃった」
そう言うと綾奈さんは舌をペロッと出し、ウインクをした。所謂てへぺろだ。
このあざと可愛い仕草に俺はドキリとしてつい明後日の方向を向いてしまう。
向いた方向にいた部活仲間は綾奈さんの仕草を見て固まっていた。
「マジで四散爆発したらいいのに」
「いっそ象に踏まれたらいいのに」
なんか言葉の切れ味が一段階アップしてる気がするけど今はあえてスルーしておく。
そんな捨て台詞を残して一哉以外は帰って行った。
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