第2章 深まる絆、深まる愛
第47話(第2章プロローグ) 後夜祭の後の話
後夜祭も終わり、俺は自宅に戻って来た。
あれからもわいわいと盛り上がった三組のカップルは自然と別々になり、後夜祭の半分くらいは綾奈さんと二人で過ごした。
一哉や健太郎達と別れてからも俺達はずっと手を握ってグラウンドを当てもなく歩いていた。
途中、高崎の男子生徒が俺と手を繋いで幸せそうな顔をしている綾奈さんを見ると、驚きとショックでフリーズしたり、膝から崩れ落ちる奴らもいた。綾奈さんの事、狙ってたんだな。
彼女を連れた男子生徒も綾奈さんを目で追ってしまって彼女に怒られている、なんてのも何組か見た。
綾奈さんは高校に入っても絶大な人気を持っていると改めて思い知った。
そんな人が俺の彼女……なんだよな。
高崎高校を後にし、綾奈さんの家に着くまでずっと手を繋いでいた。
綾奈さんの自宅に着いても綾奈さんは手を中々離してはくれなかった。
いや、俺もだな。
一年間、綾奈さんを想い続け、今日気持ちを伝えて、綾奈さんも俺のことが好きだと、両想いだったと知り、そんな綾奈さんとお付き合いを始めてまだ二時間も経過してないんだ。
綾奈さんともっと一緒にいたいと思い、手を離したくなかった。
ここであっさりとバイバイする方がおかしいだろう。
ただ、それだと家に入れないので、名残惜しいけど綾奈さんの手を離したら、綾奈さんは見るからにしょんぼりした表情をした。
そんな表情を見て、俺は少し心が痛んだけど、いつまでも家の前でそうしてる訳にもいかない。十月も後半になり寒くなってきたし、夕飯も食べる時間が遅くなるし。
そんなことを考えていたら、綾奈さんがまた俺に抱きついて、俺の胸に顔を埋めてきた。
あの時の「離れたくない」からの上目遣いは反則的な可愛さだった。
俺は綾奈さんを抱きしめて、優しく宥めると、綾奈さんは俺から離れた。
まだ寂しそうな表情をしていたけど、ここでどっちかが動き出さないと無限ループに陥るので、俺は後ろ髪引かれる思いで綾奈さんに「またね」と笑顔で手を振り、帰ろうとしたら、綾奈さんが正面から手を絡めてきた。
まだ離れたくないのかなと思いながら綾奈さんを見ると、綾奈さんは満面の笑顔を俺に向けていた。
「改めて、これからよろしくね。真人君」
そんな事を言われ、俺の心臓は大きく跳ねた。
俺も笑顔で「こちらこそよろしくね。綾奈さん」と言って、綾奈さんの手が俺から離れたのを確認して、自宅に向けて歩き出した。
綾奈さんは俺が見えなくなるまでずっと俺を見送ってくれた。
そして今、俺は自室で今日のことを思い返していると、誰かが慌てて階段をドタドタと上ってくる音が聞こえる。
「お兄ちゃん!綾奈さんとどうなったの!?」
勢いよく俺の部屋の扉が開け放たれたと思ったら、妹の美奈がそんな事を聞いてきた。ノックはやっぱりしない。
そう言えば美奈と学校で会ったのは綾奈さんを探して校内を駆けずり回っていた時だったなと言うことを思い出した。
「あぁ、ちゃんと誤解は解けて綾奈さんと付き合う事になったよ」
俺は茜との間にあった事を説明した後にそう告げると、美奈は口を開けフリーズしたかと思いきや、段々と笑顔になり、俺に抱きついてきた。
「おめでとうお兄ちゃん!」
「ありがとう美奈」
驚きのテンションそのままに、美奈から賛辞を貰ったのでそれを返した。
「あの後私もマコちゃんと一緒に綾奈さんを探してて見つからなくて、そしたら突然お兄ちゃんの声が聞こえてきて、まさかあんな告白の仕方をするなんて思わなくてびっくりしたよ!」
そうか。あの後、本当に美奈と美奈の友達の吉岡茉子ちゃんも一緒に綾奈さんを探してくれてたのか。
「まぁ、ちょっと色々あってな。綾奈さんに話を聞いてほしくて、それで思いついたのがあの案だったんだ。綾奈さんを探してくれてありがとうな、美奈。マコちゃんにもお礼を言っといてくれ」
「わかったよ。それより、お兄ちゃんはあんな良い人の彼氏なんだから、綾奈さんに愛想つかされないようにね」
「わかってるよ。これからも努力するし、俺から綾奈さんを手放す気はないから」
「言うねぇお兄ちゃん。私も応援するから頑張ってね」
「ありがとうな」
それからは、今日何が起こったのかを詳細に説明しながら夜は更けていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます