第2話

「集合!」

 「みんな、大会まであと2週間を切った。特に3年は最後の大会になる。ここで気を抜くか最後までやり抜くかで大きく変わってくると思う。今までの力を精いっぱい発揮できるようにみんなで乗り越えてやり抜こう!よし、練習を始めよう!」

 部長の挨拶からいつも部活は始まる。その後、アップのため部員でランニングを行う。声を出しながらだ。マナミはやる気とは無縁の男だ。声出しなんて最も意味のないものの一つだと思っている。何をするにも意味がないあるのか、役に立たないとか考える癖がついている。なんでも昔からそれなりにできてしまうマナミは本気になったことは一度しかない。しかし苑で挫折を味わい、こんな思いをしてまでやりたくない、こんな結果になるくらいならやらないほうがましだ。そう思ってからは普通以上のことはしようとしない。そうして今日もいつも通りにこなして部活を終えた。

 部活を終えるといつも啓介と自転車で帰宅する。

 「今日も疲れたな」

 「ああそうだな」

 「マナミは今日もさぼってたけどな!あんましさぼんなよ、大会も近いんだしさ」

 「まあそうだけど大会に対してもあんまり気持ち入らないんだよな」

 「そんなこと言って今のマナミが気持ち入ってることなんてないだろ」

 そう言って笑い飛ばしてくれる啓介は清々しい。性格もそんなに明るくない俺と話す人は気まずそうに、憐れむような目で見てくる。だが啓介は違う。どんな時でも俺に気を使わない。そういうところも好きだ。

 「まあな、俺はこうしてテキトーに生きていくのが似合ってんだよ」

 「確かにマナミっぽいとは思うけどさ、俺やっぱりさ」

 笑っていた啓介の目が徐々に真剣になっていった。

 「俺やっぱりマナミが夢に向かってたあの時が一番マナミだなって今でも思うぜ。人っていうのはさ、生きていくだけだったらテキトーでも余裕で生きていけると思うんだよな。でもそれって味気なくないか?生きる意味なんて話し出したらキリがないし、お前誰だよとかって笑われそうだけどさ、本気になることがその人を輝かせてくれるんじゃないか?今のマナミくすんでるぞ」

 啓介ははっきりと正面から言ってくれる。そういうところも好きだ。だけど俺はもうだめなんだ。とうの昔に燃え尽きた。兄のおかげで。

 「そうだけどさ、やりたいこと見つからないし見つかるまでは無理だな」

 嘘だ。

 「そういうならそうなのかもな。でもさマナミ。いつからだって遅いってことはないぞ。高校生の分際だけど少しはわかる。人生はいいなとかやりたいとか思ってやらないでいることってスゲーもったいなくて後悔すると思う。何かやり始めるのにタイミング図ってたら気づいたときにはほんとにできなくなっちまうぞ」

 「おう」

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