男子サイド


「ず、ずっと前から、小さいときから好きだったの! おっ、幼馴染の私と付き合ってくださいっ!」



 幼馴染の彼女から告白された

 彼女とは小さい頃からの付き合いで、かなり仲が良い方だったと思う

 それでも高2の後半で急に彼女が僕を避け始めた

 理由は分からない

 僕が何かやらかしてしまったのだろうか?



『どうしたの?』



 悩んでいると、学年一の美少女と呼ばれている二条さんから話しかけれた

 二条さんはとても優しい性格で、全く話したことのない僕の相談を聞いてくれた

 真摯に僕と向き合ってくれている二条さんに、、、僕はいつの間にか惹かれていた


 だが僕なんかが告白を出来るはずもなく、告白なんて出来るはずもなかった

 それでもたまに会って、時には遊びに行ったり、ある程度の仲は保っていた

 そして卒業式の今日

 二条さんに呼び出された僕は、なんのご用事だろうかと疑問に思いながら向かった



『あなたが好きです。 付き合ってください』



 僕は呆然としてしまった

 心配そうに見つめる彼女の視線でハッと気が付き、僕は慌てて返事をした

 あの時の二条さんの表情は、決して忘れられないだろう


 その後、一緒に写真を撮ることを約束した僕達は一旦別れ、僕は他に呼び出された幼馴染の彼女の元へ向かった

 そこで、僕は彼女に告白されたのだ

 告白されて嬉しかったけれど、、、僕にはもう二条さんがいる



「告白してくれて嬉しいよ。 でもごめん。 さっき二条さんに告白されて返事をしたんだ。 だから君とは付き合えない、、、本当にごめん」



 それでも勇気を出して告白してくれたであろう彼女に言葉をかけずにはいられなかった

 彼女の潰れそうな表情を見ると、何故か心の中が痛い



「こんなこと言える立場じゃないけれど、君の幸せを願っているよ。 今までありがとう」



 そう言って僕はその場から逃げるように立ち去った

 彼女の嗚咽が小さく聞こえながらも、引っ張られた後ろ髪を引きちぎる思いで走る 

 今彼女の所へ戻っても、それは幼馴染にも二条さんにも失礼なことだろうから


 それでも微かに耳の奥に残る彼女の泣き声が、やけに心を揺さぶる

 校舎の影に隠れ、柱に体重をかけるようにして僕は腰を下ろした

 まだ、彼女は泣いている


 座って目を閉じてからも、幼馴染が告白した時の朱色の顔が瞼の裏に浮かび上がる

 それがきっかけで、彼女との沢山の思い出が蘇ってきた

 彼女と遊びに行った場所、彼女と過ごした時間、彼女の笑顔、目標に向かって精一杯努力する姿勢

 それらが余計に僕の心を締め付ける

 、、、もしかしたら、ずっと幼馴染の関係が続くことを、僕は願っていたのかもしれない


 僕は二条さんが好きだ

 だから幼馴染の彼女とは付き合えない

 それでも僕は彼女の好意が無意味、無駄、無価値なものだとは決して思わなかった

 そんなこと、思いもしなかった



「そろそろ二条さんの所に行かないとな」



 ゆっくりと、だけど確かに立ち上がり、僕は二条さんの所へ向かう

 想いを切り捨ててしまった彼女に申し訳ないという気持ちは、、、まだある

 もっと早く彼女の好意に気付いていれば、違った未来もありえたのだろうか?

 しかし、これから会う彼女の前でそのような想像は失礼だ

 それでも、、、僕は零れるような小声で、こう囁いた



「もう遅いよ」

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もう遅いよ 〜卒業式の日に学年一の美少女から告白された。だから幼馴染の君とは付き合えない〜 GameMan @GameMan01

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