第582話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その59

「はい」

 少年に聞かれ、結は返事をする。

「ぼくの恩人へ、渡したいからなんだ。辛くて苦しかった時に、助けてくれた親友に」

「…ええっ!?」

 予想外の理由に口を開けて驚いていた梅川達にも、少年は詳しく話し始めた。

 

 今から数が月前、少年は部活でレギュラーに抜擢された。

 だが、それを気に入らなかった一部の二年生達から、陰で嫌がらせを受けるようになってしまったのだ。酷い時は部活の道具を隠されたり、逆に「悪口を言いふらしている」と先生へ嘘の報告をされてしまった事もあった。

 それで心が折れてしまい、部活を辞めようとした。だが、前からそれに気づいていた親友が、その二年生達の嫌がらせを校長へ報告してくれたのだ。

 動かぬ証拠もそろえてくれていたため、その二年生達は部活を辞めさせられた。顧問の先生も、その二年生達からの嘘の報告を鵜呑みにしてしまった事に何度も頭を下げて謝ってくれた。

 周りから陰口を言われ続け、心身共にまいっていた時に支えてくれた親友のおかげで、今でもレギュラーで活躍できる。だから少年は、親友に何かの形でその恩を返したい、と強く思っていたのだ。

 

「…親の仕事の都合で、北海道へ転校する事になったんだ。しかも、今日の新幹線で、北海道へ向かうんだ」

 それを聞いた満達は「なんだって!?」と叫んだ。その話が本当なら、もう時間がない、ということだ。

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