第581話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その58
流達がこの公園に着いた時には、木の下どころか公園には誰もいなかった。この時すでに、ラストハッピー賞を木の上に隠し終えていた、という事だ。
結の言う通り、前日に木の枝に糸を垂らしておけば、盗んだラストハッピー賞をすぐ木の上へと隠せる。そうすれば、追いかけてきても何とかやり過ごせる、と思ったのだ。
「…その通りだよ」
次々と自分の計画を当てていく結へ、少年は負けを認めざるを得なかった。
「細い糸なら遠くから見ても分からないし、わざわざ休憩所の木の近くまでくる人はいないからな」
満も、少年の計画に感心していた。
「…まさかずっと肩を掴まれるとは思ってもなかったし、何度も見ていた事でバレるとは思わなかったよ」
ラストハッピー賞を隠し終えた少年は、わざとトイレに入って、流達が追ってくるのを待った。
流達が公園に入り、周りを見回した時に、偶然出てきたように近づいたのだ。
そうして話しかける事で、流達に『トイレから出てきた』と印象づけた。そうすれば、疑われずにすむ、と思って一度公園から出て行こうとした。が、ラストハッピー賞だけなくなっていたショックから、流が少年の肩を掴んで離さなかったから、計画が狂ってしまったのだ。
さらに満と結まで来て、結が隠し場所を見つけてしまったので、計画は失敗に終わった。だが、不思議とがっかりしたり、悔しいとは思えなかったのだ。
「…君はなぜ、ぼくがラストハッピー賞をそこまでして欲しかったのか知りたいって言ったよね?」
この女の子が、すぐ警察へ通報する事を止めてくれた。そして盗んだことを責めずに、どうしてなのか理由を知りたい、と言っていた。自分の計画を明かしたのは、まずこちら側の事情をちゃんと聞こうとしてくれたこの女の子だったからこそ、計画が失敗しても悔しい気持ちは出てこなかったのだ。
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