第579話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その56

「そんな話、初めて聞いた…!」

 梅川は、少年が話したフリマサイトでのラストハッピー賞の傷の理由に驚きと戸惑いが混ざった声を出した。 

 少年のスマホに映し出されたフリマサイトの説明文には、ラストハッピー賞のフィギュアの箱の下の右側に落とした傷がある事がちゃんと書かれていた。そのため、このラストハッピー賞は『送料は無料』と書かれていたのだ。

「他にも、何個も出しているんだぞ!同じ出品者で何個も出しているという事は、お前らが買い占めているからだろ!!」     

 少年が叫んだ通り、そのフリマサイトには他にも数個のラストハッピー賞が出品されていた。しかも、全部同じ出品者だ。

「…確かに、同じ人が出しているようですね」

 少年のスマホを覗き込みながら、結も少年が言っていた事が本当だと確信する。

「…それで、流から盗んだのか?」

 満が、責めるのではなく『どうしてそんな事をしたのか?』という意味を込めながら聞く。

「前に、あいつらと一緒に居て、同じく買い占めているのを見たんだ。あの叔父さんと直接会った事がなさそうだったから、すぐバレないだろうと思って…」

 風山はあいつらに雇われているだけだ、と気づいた少年は、風山なら盗んでもすぐにバレないだろうと考えた。それで、強引にラストハッピー賞を奪おうと思いついてしまったのだ。

 どうしても、ラストハッピー賞が欲しかった。だが、それは自分が欲しいからではない。

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