第578話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その55

「ああ!本当だ!」

 自分のスマホを素早く操作した少年は、あるフリマサイトを突き付けた。

 そのサイトには、ラストハッピー賞が売られていたのだ。七千円、というくじ十回分の値段で。 

「それだけで、僕らだという証拠にはならないだろ…?」

 梅川が、やや迫力に押されながら反論するが、

「このラストハッピー賞に、傷があるだろ!?この傷はぼくが三日前にこいつの叔父さんともめた時についた傷なんだよ!」

 フリマサイトの画像の、ラストハッピー賞のフィギュアの箱の下の方の右端にある、上から落とした時にできるようなへこみを指さしながら叫んだ。

 

 今から一週間前、少年はラストハッピー賞を手に入れるため幸澤市のコンビニや本屋を巡っていた。

 ようやく小遣いが入ったので、ラストハッピー賞を手に入れるためだ。どうしても、手に入れたかったから。

 だが、残り十個ぐらいになると、なぜか売れ切れが続出した。そして「何者かがラストハッピー賞を買い占めている」という噂が流れ始めたのだ。

 そして少年は、偶然梅川の叔父がラストハッピー賞を二個持っていたのを見かけた。それで失礼を承知で声をかけて、一個譲ってもらおうと考えた。

 だが、梅川の叔父は「どうしても無理なんだ」と言って、断ってきたのだ。そのショックからつい、ラストハッピー賞を手に取って持ち逃げしようとした!

 びっくりした梅川の叔父は、思わず少年の手首をつかんだ。その衝撃で少年の手が開いて、ラストハッピー賞が歩道の上に落ちてしまったのだ。

 その瞬間、少年は何度も謝りながら走って逃げた。梅川の叔父は、ラストハッピー賞が盗まれなくてよかった安堵感からか、少年を追いかけることなくそのまま立ち去ったのだった。 

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