第572話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その㊾

「おーい!」

 満からの声に、流と少年は同時に振り向く。

 先ほど、休憩所のすぐ近くの木へと走っていった満達がこっちへ戻ってきた。

「それは!?」 

 そして一緒に戻ってきた結が両手で持っていた物を見て、流が思わず大声で叫んだ。結が持っていたのは、盗まれたラストハッピー賞だったからだ。

「結さんが、見つけてくれたんだ!あの木の上に、隠してあった!」

 流の前で三人同時に立ち止まった梅川が、そう説明する。ラストハッピー賞が見つかった、と思った瞬間、流は「よかった~~っ!!」と全身の力が抜けたのだ。

 それでさっきからずっと掴んでいた手の力が弱まったのか、流の手は少年の肩から離れた。ようやく自由になれたのか、少年は「ふう…」とため息をついた。

「このパーカーに包んであったんだ」

 結の隣に居る満が、両手で持っていた濃い緑色の布を流と少年に見せた。

「…それって!盗んだ奴が来ていたパーカーと同じ色だ!」

 見た瞬間、流が叫ぶ。間違いない!と言わんばかりに。

「となると、このパーカーの持ち主が犯人となるんじゃあ?」

 量販店などで売っている、何も模様が入っていないシンプルなデザインのパーカーを見て、梅川は呟く。       

「可能性はあります。木の上に隠すために、この色を選んだかもしれません」

 濃い緑色なら、同じ緑系の木の葉の中に隠しても目立たない。犯人はそのためこの色のパーカーを着ていたのだ。      

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