第571話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その㊽

「包んでいた物のおかげで、受け止めた時の衝撃は思っていたよりありませんでしたから」

 結が両手で乗せるように持っていた物は、よく見ると濃い緑色の布に包まれていた。

 大きい布の真ん中に何か四角い箱を置いて、四つの先端をすべて上へと持ち上げた後、結ばずに先端から少し下の部分を糸でぐるぐる巻きにしてほどけない様にした。そんな風に見える包みだった。

 包んでいる物は、横と縦が二十㎝、幅が十五㎝の箱のようだ。結は、これが何となく見覚えがある形に見えた。

「これ、パーカーじゃないか?」

 じっと見ていた満が、気づいたように言う。

 風呂敷など、四角い布にしては、布の端の形が違っていたのだ。さらに布の端に何か別の形をした布が付いていたのに見えた。

「開いてみましょう」

 結はしゃがむと、膝の上に濃い緑色の包をのせる。そしてその包みをほどけないようにしている結び目を見つけると、爪を使って慎重にほどいたのだ。

 透明な細い糸をほどくと、包んでいた布が広がっていく。だが、結達は布を広げた瞬間、出てきた物に目を大きく開いて見たほど驚いていた。

「これは…!?」

 出てきたのは小さな箱だった。それは、盗まれたラストハッピー賞だったのだ。

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